【夏の甲子園決勝】京都国際&関東一 指揮官と選手たちが試合後に明かした「延長10回タイブレーク」1点をめぐる攻防の真実 (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka

 2球目。関東一はもう一度シフトをかけるが、またもボール。3球目、西村はバスターの動きを見せて見送りストライク。そして、4球目。その前のバスターの構えにもひるまず、ファースト、サードがチャージをかける。それを見た西村は、4球続いた外角のストレートをレフト前にはじき返した。

「プレスをかけてきたので、裏をかいて打ちにいきました」

 そう言ったのは西村。小牧監督はこう補足する。

「基本はバントのサインです。年間を通じて(相手野手が)出てきたら打つ練習はしています。もし失敗しても怒りません。任せているこちらに責任がありますから」

 もちろん、関東一もバスターは頭にあった。だが、打者有利のカウントにしてしまったことで、余裕がなくなっていた。坂井は言う。

「(初球ボールで)カウントを悪くしてしまった。(4球目は)カウントを取りにいった球です」

 投じたのは、134キロのストレート。最速151キロの坂井からすれば、明らかに球威のない球だった。

 無死満塁で前進守備。裏の攻撃があるとはいえ、坂井には「1点もやれない」という意識が働く。1番の金本祐伍に対し、坂井はギアを上げて148キロの速球を投げ込むが、制球が定まらない。9回にスライダーで死球を与えた影響もあり、変化球を投げる余裕はなく、すべて直球でフルカウント。6球目は147キロのストレートがワンバウンドとなり、押し出し。守護神として必ず最後のマウンドにいた男が、背番号11の大後武尊にマウンドを譲った。

【京都国際が2点目を取れた意義】

「『勝ったな』と思いました」

 そう言ったのは、三塁走者の清水だ。「勝った」というのは、試合の勝敗ではない。ライトの成井聡に対してだ。大後がマウンドに上がった10回表無死満塁。ひとり目の打者・2番の三谷誠弥の打球はライト右への浅いライナー性のフライになった。タッチアップするには、飛距離は足りない。だが、清水は果敢にスタートを切った。

「浅かったですけど、ライトの捕った体勢を見たら(体が)浮いていた。いい球を投げる体勢じゃないなと思いました。自分は今日打てていなかったし、やれることは走塁と守備で貢献すること。腹をくくって、迷わず強気でいきました」

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