【夏の甲子園決勝】京都国際&関東一 指揮官と選手たちが試合後に明かした「延長10回タイブレーク」1点をめぐる攻防の真実 (3ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka

 清水の見立てどおり、ライトからは好返球は来ず、ファーストに低い送球を返すのが精一杯。背番号5は悠々とホームインした。結果的に、この1点が勝敗を分けた。ライトは強肩の成井。なぜ、いい送球ができなかったのか。

「2番で体が大きくない。前に落ちる打球が多いので、浅く守っていました。打球はライナー性だったんですけど、思ったより伸びてきて、ジャンプする感じで捕りました。打った瞬間は、(タッチアップは)来ないかなと思ったんですけど、ランナーには(捕球した時の)体勢を見られたんだと思います」

 じつは、成井は9回裏の打席で右腕に死球を受けている。当たったのはエルボーガードがある部分だったが、「ちょっと違和感がありました。それで、ワンバンになってしまった」。死球を受けた直後のイニングだったのが、送球にも影響した。

 無死一、二塁から始まるタイブレーク。1点で終わるか、2点目を取るかで、戦況は大きく変わってくる。2点が入ったことで、10回裏、京都国際は投手・西村がバント処理をミスして無死満塁になっても、内野陣は前進守備ではなく定位置で守ることができた。

 ショートゴロの間に1点を失い、その後、四球で一死満塁になった時も、二遊間は前進守備を敷かず、ベースライン上に守った。一打サヨナラ負けの場面ではあったが、ゴロを打たせ、一つひとつアウトを積み重ねればいいと思えたことが、苦しい場面を乗り越えることにつながった。

 試合中、ベンチで小牧監督はこんなことを言っていたという。

「我慢比べだよ。あわてず、普段やっていることをやろう。普段やっていることをできないほうが負けるよ」

 タイブレークが始まった直後、ブルドッグシフトの初球。もし、あそこでストライクを投げられていれば......。いきなりのバスターはなかっただろう。いつもできていたことができなかった。関東一の歯車が狂った大きな1球だった。

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