【夏の甲子園】凛々しい目、ツーブロックのヘアスタイルに太い声...青森山田の152キロ右腕・関浩一郎にスター誕生の予感 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

【独特な感性を持つ本格派】

 なぜここまで鍛え込んだのか。報道陣からそう問われた関は、春のセンバツでの屈辱について語った。

「広陵戦で自分の自信のあるボールを打ち崩されて、また自信を持てるボールをつくるために頑張ってきました」

 とはいえ、関は球速にこだわりがあるわけではない。

「自分はボールの質にこだわって、多少ボール球でも振ってもらえるボールを目指しています」

 関のストレートには「2面性」がある。捕手に向かってきれいな回転で伸びていくストレートと、シュートしながら浮き上がるストレートの2種類に分かれるのだ。関の言葉を受けて、てっきり前者のストレートを磨きたいのかと思っていた。

 だが、あらためて関に尋ねてみると、そうではなかった。

「自分のなかでは指にかかった(回転のきれいな)ストレートはよくないと思っていて、シュートして自打球になるくらいがベストだと考えています。そこまでいったらこっちの勝ちなので。キレのいいストレートより、汚いほうがあとにつながるかなと」

 美しいバックスピンのかかったストレートを目指すのではなく、多少シュートさせて打者に苦痛を与えるストレートを目指す。本格派投手としては、かなり変わった感性と言えるだろう。

 関の特殊性は変化球への考え方にも見てとれる。関の武器であるスライダーの球速が上がっている点を指摘すると、こんな答えが返ってきた。

「ストレートと比例してスライダーの球速も上がっています。自分の考え方としては、『ストレートとスライダーは一緒』ととらえているので」

 その言葉だけでは理解できなかったため、重ねて「一緒というのは、ストレートもスライダーも同じ腕の振りで投げるということですか?」と聞くと、関は少し黙考した。必死に言葉を探してくれているようだった。

「感覚よりかは、『同じボール』というくらいの考え方を持っているので。セットで考えています」

 受け取り方が難しいニュアンスだったが、ストレートとスライダーを「同じボール」ととらえることで、結果的にスライダーが速い球速帯で鋭く曲がるということだろう。関に「スライダーを曲げようと思って投げていないということですね?」と確認すると、「はい」とうなずいた。

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