仙台育英はなぜ毎年のように超強力投手陣を輩出できるのか 140キロ超えはなんと9人! (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki

 ハイレベルな投手力──それは近年、仙台育英の名を全国に轟かせることとなったストロングポイントである。

 東北勢初となる全国制覇を遂げた2022年夏は、古川翼や斎藤蓉をはじめとした「140キロクインテット」。準優勝した昨年夏も、前年の日本一を支えた高橋煌稀、湯田統真、仁田陽翔の「150キロトリオ」がいた。

 毎年のようにこれだけのタレントを輩出できる背景として、須江の繊細な眼、そして視野の広さから裏打ちされた育成がある。

 須江が彼らに求めるのは完成度の高さだ。ストライク率は65%以上が絶対条件。2者連続で出塁を許すことも細かくチェックされる。連続ヒットや四死球はもちろん、「冷静さの指標でもある」と、フィルダースチョイスももちろん評価基準に加えられている。

「いいピッチャーの条件として、シンプルにコントロールがいいことだと思っているんです。防御率、奪三振、四死球率のようなわかりやすい数字も大事にしていますけど、ここに関してはかなり厳しく評価しています」

 また、須江は変化球の球速帯も注視する。

 簡潔に述べれば、「空振りがほしい際に奪える球種をいくつ持っているか」だ。スライダーだけでなく、フォーク、ツーシームと、異なる方向に曲がる球種を高次元で操れるピッチャーが「必然的にいい背番号が与えられる」と、監督は明言している。

 このように、須江は「いいピッチャーになるため」の道標を提示している。だからこそ、豊かな素材が多く出現するわけだが、技術だけでなくピッチャーそれぞれが成熟するまでの歩みを見失わないことを強調する。

「これは誇れることに、うちの伝統になりつつあります。自分がチーム内でどの位置にいるのかといった自己理解から、どんなことをすれば伸びるのかという探求心、姿勢として見せる練習量につなげていく。それによって、誰にどんな波及効果を生むのかということが、ピッチャーは全体的に体現してくれています」

 そこに至るまでには、須江自身が自己理解を深め、探求してきた経緯がある。簡単に言うと、チームの取り組みを確立させている高校から学び、アウトプットしていることだ。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る