仙台育英はなぜ毎年のように超強力投手陣を輩出できるのか 140キロ超えはなんと9人! (3ページ目)
【投手は甲子園でも戦えるレベル】
須江が代表的な例として挙げたチームが、聖光学院と慶應義塾である。
聖光学院は立ち居振る舞いを大事とする。私生活からほかの者を納得させるだけの姿勢を見せ、試合になれば「あいつが打たれて敗けたら仕方がない」と、チームメイトから認められなければグラウンドに立つ資格を得られない。
慶應義塾が備えるのは、選手たちの卓越した思考と行動力だ。指導者から促される前に最適解を導き出し、実行に移す。したがって、苦難や難題に直面しても自らの力でそれらを打破できる強さが自然と身につくのである。
「すごく大袈裟に言うようですけど、聖光さんと慶應さんの取り組みは、じつは多くの日本人にないものというか、野球界だけじゃなくて日本そのものの未来にとって、絶対に必要なことを教えているんですね。だから僕は、そのハイブリッドでありたいと常に思っているんです」
須江のこの理念が浸透し、顕在化し始めたのが、日本一の前年にあたる2021年。伊藤樹がエースだった世代からだという。
丹念に耕された土壌は、伊藤から古川、斎藤らに託され、そして高橋、湯田、仁田たちへ連綿と継承されていった。
今年の投手陣で言えば、須江が「軸になるでしょう」と見据える佐々木と山口も、先人たちの意志を心に焼きつけ、腕を磨く。
「実質的なエース」と指揮官が公言する佐々木の最速は145キロ。球速以上に秀逸な武器が変化球で、スライダーとチェンジアップはカウント球にも決め球にもなる完成度の高さがある。また、カットボールは空振りが奪えるキレ味があり、タイミングを崩すカーブも持ち合わせる。その佐々木が後輩時代、参考としてきたのが湯田だった。
「湯田さんと高橋煌稀さんは僕と同じ軟式出身で親近感もあったというか、『ふたりを参考にすれば成長できる』と思っていて。湯田さんとは一緒に練習をさせてもらっていたなかで、『力んだまま投げたらいいボールが投げられないから、リリースまで力を抜いていたほうがいい』とか、いろいろアドバイスをいただいて。それが今、生きています」
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