四国に現れたとんでもない逸材・岡村宝(高知商) 12球団のスカウトが視察したその魅力とは? (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 高校2年だった昨夏は大会前に股関節を痛め、ベンチ入りできず。秋は股関節痛が癒えた県大会の途中から戦線復帰。高校3年の春は死球を受けて右手小指を骨折し、県大会終盤に復帰している。

 右手小指を骨折した際、レントゲンを撮影すると岡村の骨端線がまだ閉じていないことがわかった。人間は関節部分の骨端線が閉じると身長の伸びが止まり、大人の体になって筋肉がつきやすくなると言われる。つまり岡村の身長はまだ伸びる可能性があり、練習で強い負荷をかけると故障するリスクがある。

 上田監督は慎重を期して、原石と接している。

「高校生活のなかで仕上げようとすればケガするでしょうし、ケガをしてつらいのは本人なので。なにより、宝がいないとチームが困りますので、とにかくケガせんように考えています。ただ、本人もケガをするたびに考えが大人になって、取り組みにも表われてくるようになりました」

【魅惑の大器は大学進学予定】

 高知商グラウンドのブルペンに、岡村が立つ。左足をやや一塁側に開く形のセットポジションから、真っすぐに左足を上げる姿が美しい。腕の振りはやや斜めの軌道のため、縦の角度を生かしきれているとは言いがたい。それでも、指にかかったストレートは捕手に向かって加速する体感のボールだった。これから体が成熟するにつれて、技術面も変化していくのだろう。

 投球練習後、岡村はあどけない笑顔で反省を口にした。

「いいボールと悪いボールの差があるのが自分の悪いところなんです。まだ下半身ができていなくて、体幹も弱くて、フォームが一定にできていません」

 現段階で最高球速は144キロ。打撃力は高いものの、高校通算1本塁打に留まっている。プロスカウトから熱視線を受けることに対して、岡村は「自分は全然たいしたことのない選手だって、今も思っています」と戸惑いを隠さない。

 今年1月、岡村は日本体育大の練習に参加した。充実した設備、大勢の野球部員を目にして、岡村は「4年間、やっていけるのか?」と自信を喪失したという。日本体育大は辻孟彦コーチ(元・中日)の投手育成に定評があるだけに、なぜ自分に声がかかったのかも半信半疑だった。

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