四国に現れたとんでもない逸材・岡村宝(高知商) 12球団のスカウトが視察したその魅力とは? (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 それでも、3月に入ると「冬を越えて、秋よりもはるかにボールがよくなってきた」と少しずつ自信がついてきた。岡村は上田監督に「日体大にお世話になります」と申し出ている。自身も日本体育大のOBであり、「いきなりプロへ行くよりワンクッション入れたほうがいい」と考えていた上田監督も賛成し、今秋時点でのプロ志望届の提出は見送ることになった。大学進学後も、投打二刀流の継続を視野に入れている。

「野球をやっていて、一番楽しいのはどんな時ですか?」

 岡村にこう尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「自分のピッチングができて、テンポよくアウトがとれる時です。やっぱり勝てた時が一番うれしいですから。負けたら何も意味がなくなるので、勝てるピッチャーを目指しています」

 昨秋は高知大会決勝で高知に0対2で敗れ、今春は高知大会決勝で明徳義塾に3対4で惜敗している。今夏も両雄が高知商の前に高い壁となって立ちはだかるだろう。だが、岡村は覚悟を固めている。

「今年は周りからもチャンスと言われていて、甲子園は自分にとっても夢なので何としてもかなえたいです。でも、今の実力では無理だと思います。体をしっかりとつくって、勝てるピッチャーになりたいです」

 県内きっての歴史を誇る高知商は、伝統的に好投手を輩出してきた。代表的な投手を挙げると、高橋善正(元・東映ほか)、江本孟紀(元・南海ほか)、鹿取義隆(元・巨人ほか)、中西清起(元・阪神)、津野浩(元・日本ハムほか)、岡林洋一(元・ヤクルト)、藤川球児(元・阪神ほか)などがいる。

 だが、最後にプロへ送り出した選手となると、1998年ドラフト1位の藤川までさかのぼらなければならない。岡村は4年後に続く存在になれるだろうか。

 上田監督は城北中で監督を務めた際に藤川を指導した恩師でもある。藤川と比較して岡村の素材をどう見るか尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「宝は体がまだ全然できていないので、これから大きくなったときにどれだけの選手になるのか......。想像もできないですし、楽しみでもあるんですよね」

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