プロか漁師か...投手経験半年で150キロ到達の紋別高・池田悠真が悩める胸中を吐露 (5ページ目)
そんなにあれもこれも投げてなくていいんじゃないかなぁ......。コントロールできる変化球なら種類があるに越したことはないが、そんな高校生はなかなかいない。池田のように140キロ中盤のボールをゲーム後半まで投げられる投手なら、その日の自信の持てる球種を3種類、いや2種類で十分だろう。ストライクになりづらい変化球は、かえって自らのピッチングを苦しめる。
結局、9イニング完投して5失点。バックのエラーによる失点もあったが、変化球でカウントを悪くして、揃えにいった速球を狙い打ちされてパッコーン! そっちのほうが明らかに多かった。
【支部予選で負けたらプロはない】
練習と実戦の2日間。池田のあふれる才能とこれからの課題を、すべてさらけ出してくれたと思う。
まだ脆さはあるものの、抜群の体躯と身体能力を合わせて考えれば、今年の北海道の右腕でナンバーワンの素質だと評価したい。
「去年の秋頃まで、卒業後の進路は"漁師一択"だったんです。ちょっと肩の強いぐらいの、ふつうの外野手でしたから」
それが、この春の「150キロ」があっという間に伝わって、大学の監督が来る、プロ野球のスカウトが来るで、池田の周辺は一気にざわつき始めた。
「でも、ほんと自信ないんです......」
そりゃ、そうだろう。そもそもが、投手になって、まだ半年。チームも支部予選を勝ち抜いて、北海道大会に出場したこともない。「自分はやれる」と確信できる事実がないのだから、無理もない。
「そこまで自信のない自分なんかが、プロとか言っていいんだろうかって......まだ、漁師っていう道もぜんぜん消してないんです。自分、このへんの田舎が大好きなんで」
学校のある紋別から、海沿いに40キロほど北へ行った雄武(おうむ)という漁業の町で池田は生まれ育った。漁師だって立派な「進路」だ。これだけの体があって、パワーがあって、子どもの頃からの実戦経験と郷土愛があれば、文句なしの即戦力、バリバリのドラフト1位に違いない。
「どっちにしても、支部予選で負けたらプロはないと思っているんで」
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