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プロか漁師か...投手経験半年で150キロ到達の紋別高・池田悠真が悩める胸中を吐露 (4ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko

 そして、翌日の士別翔雲高との練習試合。紋別から、野球部バスで片道およそ2時間半。もちろん日帰りのダブルヘッダーである。

「それがこっちの日常ですよ。旭川の試合だと、片道3時間近く。移動ひとつとっても、修練ですな」

 真っ黒に陽に焼けた顔で、加賀谷監督が笑う。

 士別翔雲高も昨年夏、北北海道大会ベスト4の強豪である。

 サイドハンドの高橋京太郎、オーバーハンドの大西絢斗の二枚看板に、捕手・池澤琉生(るい)、二塁手・池澤巴琉(はる)の双子コンビがセンターラインを締める。2年生の強打者・大塚吐夢の故障欠場は残念だったが、代わりに諸岡洸佑がその片鱗を見せてくれた。

【変化球多投が落とし穴に】

 さあ、池田の立ち上がりだ。長距離移動なんのその、前の日には打者に50球投げているのに、のっけからエネルギッシュに投げまくる。

 ベルトよりやや高いゾーンで、速球が唸っている。スイングの上を通過していくホップ成分抜群の剛速球。 観戦にやって来ていたスカウトの方のスピードガンが、初回から「146」を出して、なかばあきれたような表情を浮かべる。

 ストレートにカットボールを交え、本人が速球以上に頼りにする変化球を勝負球に快調なペースで投げていたが、その様子に変化が見えたのが、抜けたストレートが右打者のグリップに当たってから。

 夏の大会直前の練習試合。大きなケガは一大事になりかねない時期だ。池田のピッチングに変化球が増えた。もともと変化球のほうが投げやすいと話していたが、そこが"落とし穴"になったように見えた。

 たしかに球種は豊富だし、うまいことリリースできた時のボールの動きはそれぞれ非凡なのだが、まだコンスタントに制御できるまでには身についていないのかもしれない。いろいろ使うことで、逆にカウントを苦しくしている。

 それでも前半をなんとか最少失点に抑えて、後半の入りの6回も145キロ前後のボールを続ける。予定のイニングを超えてもまだ力感は衰えていなかったが、再び同じスパイラルに陥ったのが、やはり死球からだった。

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