プロか漁師か...投手経験半年で150キロ到達の紋別高・池田悠真が悩める胸中を吐露 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko

 最初に見たのは守備練習。ライトからの返球の勢いと伸びに驚いた。右中間の深いところから二塁ベースへ、またはライト定位置からホームへ、「ウオッ!」といううなり声とともに、弾丸ライナーのようなダイレクト返球が届く。

 体幹の強さは本物。握力だってハンパないはずだ。
 
「握力ですか......去年の秋ぐらいに測った時は80キロでした」

 こっちがひっくり返りそうになるようなことを、サラッと話す。自分の"等身大"が見えていないのが、かえって"大物感"として伝わる。

 そして守備練習が終わって、ダグアウトに引き上げていく時のランニングフォームだ。下半身の弾力と大きなストライドでグイグイ進んでいく。腕を大きく振っても頭はまったく動かず、ボディーバランスのすばらしさは一目瞭然。50m走のタイムは6秒1ということだが、今はもう少し速くなっている実感があるという。

「おじさんとおじいちゃんが漁師なんで、子どもの頃からいろいろ手伝っていました。ホタテの稚貝の放流に、毛ガニ漁......タコ漁は、タコの入った箱を海の中から巻き上げる作業がありますし、海から上げた昆布を畳んで背負うと20キロぐらいになりますから」

 高校に入る前から、大自然を相手にした生活のなかで鍛えられた屈強な体躯が、すでに構築されていた。

「速い、速いって言われるんですけど、自分としてはそこまで速くないんじゃないかと思っていて。たとえば、北見柏陽の山内(悠生/184センチ・87キロ/左投左打)のほうがずっと速いですから」

 同じ北見支部で評判の最速147キロといわれる大型左腕を引き合いに出してきた。この夏、支部予選の決勝で当たることになりそうな地区最強のライバルだ。

「冬から本格的にピッチャーの練習をするようになって、急激にスピードが上がったことには、正直、自分自身がいちばん驚いているんです。それでも自分では、『たいして速くないっしょ』って。ピッチャーとしての自覚が、そこまでじゃないっていうのか......」

 おおらかな笑顔で自己分析。

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