東京六大学最多Vの早稲田大・小宮山悟監督が築き上げた「令和の選手たち」との信頼関係 (2ページ目)

  • 白鳥純一●取材・文 text by Shiratori Junichi

 伊藤は6月1日の慶應大戦にも登板し、8回1失点の好投で勝利投手に。小宮山監督は「この春に投げたピッチングはすべて見事な投球で、11番を渡してよかった」と褒め称えた。伊藤にエースナンバーを託すことを決めたのは昨年の秋。小宮山監督は1989年のドラフト1位でロッテに入団する前の、自身の早稲田大での4年間の登板記録を手渡し、奮起を促したという。

「伊藤は『ドラフト1位でプロに行きたい』と夢見て早稲田に来たはずなのに、昨秋までを見る限りでは『到底無理だろう』と。『ドラフト1位で指名されるとはこういうことだ』と知ってもらおうと思って、僕の記録を手渡しました。

 それで冬の間にどれだけ頑張れるか楽しみにしていましたが、見事に奮起してくれた。春の伊藤の投球を見て、きっとドラフト指名候補リストにも名前が載ったんじゃないかと思いますし、ここから本人の努力次第で、さらに夢に近づけるんじゃないでしょうか」

 その小宮山監督の記録を寮のドアに貼りつけているという伊藤も、「これまでは僕自身も納得できていないところがある中で、監督から発破をかけていただいた。『もっと走り込みやトレーニングに励まないといけない』と思いました」と監督の思いを受け取り、今季は3勝。最優秀防御率を逃した悔しさを滲ませながらも、「コントロールの向上が安定した投球に繋がった」と振り返った。

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 優勝インタビューで、選手たちの血の滲むような努力に感謝を述べた小宮山監督は、「歯を食いしばって努力をしなければなりませんが、一歩間違ったら故障に繋がるような時は『それはやりすぎだ』と止めるのが大人の仕事。(自身の感覚では)まだまだ物足りなさはあるが、それでもいいバランスでできているんじゃないかと思う」と、今季のチームに言及。時代に合わせた努力で実力を磨き上げてきたチームは、毎試合さまざまな選手が日替わりで活躍し、勝利を積み重ねてきた。

 だが、勢いに乗るチームの中でひとり取り残されていたのが、今秋のドラフト候補と目される外野手・吉納翼(4年)だ。

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