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東京六大学最多Vの早稲田大・小宮山悟監督が築き上げた「令和の選手たち」との信頼関係 (3ページ目)

  • 白鳥純一●取材・文 text by Shiratori Junichi

「少し力み過ぎですが、どうしてもネット裏(スカウト)の評価が気になるでしょうから。平常心でやれ、というほうが無理な話ではある」

 そのように吉納の心情を慮(おもんぱか)った指揮官は、首位打者とベストナインを獲得した尾瀬雄大(3年)、宗山塁(明治大4年)らを押しのけてベストナインを手にした山縣秀(4年)、4番で主将の印出ら3割打者が並ぶ打線の中で、本調子ではない吉納の起用を続けた。

 なかなか調子は上向かなかったが、6月1日の早慶戦では、「毎試合、違うヒーローが出てきていたので、『そろそろ僕の番だな』と思っていた。自信を持って試合に臨めた」と吉納自身が振り返った通り、2本塁打、4打点の活躍でリーグ優勝を引き寄せた。

 それまでの2週間は、2020年まで早稲田大の打撃コーチを務めた徳武定祐氏の下に出向くなど、「とにかく(バットを)切り込むことを意識しながら死ぬ気でやってきた」と話す。それを経ての、約3万人の観衆が見守る早慶戦での活躍については「本当に気持ちよかったですし、特に2本目の本塁打を打った時の歓声は、僕が死ぬまで絶対に忘れられないと思う」と語った。

 普段はあまり選手を褒めない小宮山監督も、「本人がプロでやりたいという希望を持っている。NPB球団の判断次第ですが、プロの世界に出しても恥ずかしくないバッティングだったと思います」と、吉納の実力に太鼓判を押す。対する吉納は、リーグ優勝を決めた6月2日の試合後、今後の成長について次のように述べた。

「リーグ戦は平常心でやっているつもりでしたが、やっぱり『いいところを見せたい』という思いは多少ありましたし、本当に不甲斐なさを感じる部分もあった。開幕から今日のような活躍ができていたら、もっと楽に試合を進められたんじゃないかと思う。これから全日本選手権が始まりますが、自分がチームを日本一に導きたいと思います」

 昨秋のリーグ戦を制し、明治神宮野球大会で日本一を手にした慶應大の堀井哲也監督さえも「伊藤くんや宮城(誇南)くん(2年)をはじめとする投手陣が安定していて、それを支える打線も非常に活発。優勝にふさわしいチームだったと思います」と唸らせた早稲田ナインは、6月10日からの全日本選手権大会に挑む。

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