名物記者がうなったセンバツの逸材たちは「間違いなくドラフト候補」 新基準バットで柵越えの選手も (4ページ目)
【高校野球は「偽物がいなくなる」世界へ】
ーー柵越えではありませんが、ランニングホームランを打った大阪桐蔭(大阪)の境亮陽選手もプロ注目の外野手ですよね。
そうですね。境選手に関しては、センバツに出場した全野手のなかで、個人的に一番びっくりした選手かもしれません。彼は高校1年の秋からチーム内で存在感を出し始めた選手なんですけど、見るたびに技術や能力がグレードアップしていくんですよ。もともと中学時代は陸上部だったので、足が速いのは想像できると思うんですけど、肩がめちゃくちゃ強いというのも彼の大きな魅力なんです。
肩の強さだけでいうと、今年の高校生外野手のなかではナンバーワンと言っても過言ではないぐらいの強肩です。今大会でもランニングホームランを打ったりと、バッティングでも結果を残しています。
境選手も右投げ左打ちの外野手ですが、運動能力がズバ抜けて高いので、もし僕がスカウトだったら球団に強く推したいですね。ただ、こういう選手は大学野球でも引く手数多なので、彼がどういう進路を選択するのか注目していきたいです。
ーーセンバツは新基準バットを使用した初めての大会になりましたけど、今後も各地で導入は増えていくと思われますか?
僕は増えていくんじゃないかと思っています。成長期の高校生というのは環境に合わせてどんどん進化していきますからね。センバツに関しては、長打が少ない点から飛距離の伸び悩みを感じてしまう大会となりましたが、実際に新基準バットを使用した選手たちからは、「しっかり芯で捉えた打球は旧基準バットの時と変わらず飛んでいく」という感想をよく聞きます。
前向きに捉えれば、新基準バット導入後は「偽物がいなくなる世界」になるということ。今までの金属バットなら、芯を外してもパワーがあれば打球はそれなりに飛ぶので、多少のごまかしが効いていましたが、これからは自分の技術で完璧にとらえないとホームランにはならない。
つまり、夏の大会に向けて新基準バットへの対応を進めていけば、本当に技術力のある選手たちだけが結果を残していく世界になるんじゃないかと。
個人的には、青森山田みたいに木製バットを使う選手が増えて、乾いた音が夏の甲子園に鳴り響いてほしいなと思っています。その姿を見ることができた時に、本当の意味で高校野球の世界が変わるんじゃないかなと、そんな予感がしています。
構成/佐藤主祥
【プロフィール】
菊地高弘 きくち・たかひろ
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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