名物記者がうなったセンバツの逸材たちは「間違いなくドラフト候補」 新基準バットで柵越えの選手も (2ページ目)

  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

【機動破壊から潜在能力を引き出す野球へ】

ーー新基準バット導入の影響は関係なく、センバツで目に止まった打者はいましたか?

 センバツで健大高崎を初優勝に導いた、箱山遥人捕手です。間違いなく今年のドラフトで指名されるなと、試合を見ていて思いました。僕自身、もともと健大高崎は今大会の優勝候補の一角として名前は挙げていたんですけど、"筆頭"とまでは推せなかったんです。

 というのも、ここ数年の健大高崎の試合を見ていると、少し大味な野球をしている印象があったので、負けたら終わりの一発勝負で勝ち続けることができるのか、多少、疑念を持っていたんです。

 しかし蓋を開けてみれば、想像以上にすばらしいゲームを展開していて、箱山捕手のゲームコントロール術はさえわたり、チームのなかでもその存在感は際立っていましたね。健大高崎は佐藤龍月投手と石垣元気投手の2枚看板を要するチームなんですけど、箱山捕手はこのふたりのリードをそれぞれ変えていたんです。

 佐藤投手に対しては、中学時代からU-15日本代表のエースで、頭の回転の速い投手ですから、「こういう配球をして、こういう狙いで打ちとっていこう」と具体的な戦術をしっかり伝えていたらしいです。

 かたや石垣投手は、箱山捕手の言葉を借りると「何も考えていない投手」だと。いわゆる、マウンドでしかつかめない打者の"肌感覚"を重視する投手なんです。なので、細かくサインを出してリードしていくのではなく、「何も考えずに俺のミットに投げ込んでこい」と言っていたそうです。

 その投手のタイプに合わせてうまくリードを使い分け、彼らの持ち味を存分に出しきった。そんな箱山捕手の卓越したリーダーシップやゲームコントロール術があったからこそ、健大高崎の初優勝につながったんじゃないかと思います。

 また、バッテリー以外の部分でいうと、健大高崎はこれまで、走塁など機動力で相手の守りを崩す"機動破壊"を代名詞に注目を浴びていたチームでもあったんですが、今大会を通じて、健大高崎の野球がガラッと変わったというか、走塁だけのチームではなくなった印象を持ちました。

 機動力を生かした戦術の練習は続けているらしいんですけど、今のチームには非常に高いポテンシャルを持った選手たちが集まっているので、走塁で1点をもぎとる野球から、彼らの潜在能力を引き出し、その実力を発揮させる野球にシフトしている。

 優秀なコーチングスタッフがいるので、恵まれた環境のなかで着実に、野球選手としての力を伸ばしていけているんだなと、すごく感じますね。

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