一流ビジネスマン兼大阪学院大高監督が語る「野球と会社の共通点」激戦区で甲子園を狙う指導法とは (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 大阪学院大高は元プロ野球選手・江夏豊氏(元阪神ほか)の母校として知られる。1996年春にセンバツ出場、2018年夏に北大阪大会準優勝と躍進し、2022年にはクッション性に優れた人工芝を使用した野球場も完成。雨の日でも技術練習ができる半野外練習場、ウエイトトレーニング施設も充実しており、学校をあげて野球部を強化しようという機運が高まっている。

 2022年に辻盛監督が大学野球部監督を退任。大阪学院大関係者からのオファーを受け、野球部にかかわるようになった。

【教育のキモは教えないこと】

 だが、辻盛監督が携わったタイミングは監督が交代するなど、チームとして不安定な時期だった。辻盛監督は当時を振り返る。

「グラウンドのネットにもたれて、ゲームして遊んでいるやつがいるんです。ウォーミングアップもずっとおしゃべりしていて、なかなか練習が始まらない。ウエイトトレーニングをするように指示しても、見に行ったらみんなゲームで遊んでいました」

 だが、辻盛監督が声を荒らげて選手を叱責することはなかった。雑談に夢中になる選手たちに「なんの話をしてるん?」と話しかけ、選手の話を聞いたうえで「練習中にそんな話をしても野球はうまくならんと思うけどな」と語りかける。辻盛監督は「分厚い氷を溶かしていくようだった」と振り返る。

「今の選手は頭がいい。あちこちから情報を仕入れて、考えています。だから『この監督はバカやな』と値踏みをしてくるわけです。指導者と選手は上下関係ではなく、指導者が選手のサポーターになっていくと選手は話を聞いてくれるようになります。ウチは指導者がヒントを出して、選手が解決していくスタイルです」

 辻盛監督は「採用と教育が大事なのは、野球も会社も同じです」と語る。それでは、教育のキモとは何か。そう尋ねると、辻盛監督は「こちらから教えないことです」と答えた。

「こちらから何が悪いかを言えば、考えなくなりますから。だから質問がすべて。『なぜうまくいかなかったのか?』を質問していって、自分で問題点を認識させる。こちらが質問して、考えられるようになることが大切です」

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