史上初の開幕連勝スタート、目標は優勝から全国大会1勝へ 秀才軍団「京大野球部」に今何が起きているのか? (2ページ目)
その近田監督であっても、今春の投手陣の出来は想像を超えていた。関西大から勝ち点を奪った試合直後、近田監督はこんな本音を漏らしている。
「正直言って、出来すぎです。想像以上の結果でした。オープン戦では投手陣が崩れる試合が多くて、野手に負担をかける試合が多かったので。それでも、本当によく頑張ってくれました。素直に称えたいですね」
1年時からレギュラー遊撃手として活躍する細見宙生(ひろき/3年/天王寺)は、シーズン前の投手陣に対してこんな不満を抱いていたという。
「オープン戦では守っていて、めちゃくちゃイラついていました。野手の間では『ピッチャー陣は何の練習してるんやろ』とボロカスに言ってましたね」
【オープン戦で結果を残した技巧派右腕】
ただし、細見のなかでひとりだけ「いけるんちゃうか」と感じる投手がいた。4年生の西宇陽(にしう・あきら/大教大池田)である。
「西宇さんはリーグ戦の経験もあるし、あまり打たれていなかったので」
とはいえ、西宇は相手を圧倒するタイプの投手ではない。身長168センチ、体重73キロと小柄で、メガネをかけてマウンドに上がる姿に威圧感はない。ストレートは常時130キロに満たず、90キロ台のスローカーブなど緩急を使って打たせてとる技巧派右腕である。
西宇はマウンドと同様に飄々とした様子で、自身の投球スタイルについて語った。
「金丸みたいにズドーンと投げられたらいいですけど、無理なもんは無理なので。自分は割りきって、のらりくらりと投げるようにしています」
そんな西宇を下級生時から評価していたのが、2022年に学生コーチを務めた三原大知だった。三原は灘高時代に生物研究部に所属していた変わり種で、野球のプレー経験は皆無。MLBのデータサイトに入り浸る「野球ヲタ」だったことから京大野球部にアナリストとして入部し、4年時には近田監督から投手起用の全権を委任されるほどになった。現在はアナリストとして、阪神タイガースに入団している。
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