都内有数の超進学校に「二刀流」のドラフト候補 桐朋・森井翔太郎とは何者か? (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 高校に進学すると、森井は周囲にプロ志望を明言して野球に打ち込むようになる。ただし、当然ながら桐朋でプロ野球選手志望は森井しかいない。温度差は大きかった。「口ではプロと言っているけど、どうせ大学に行くんだろ?」という軽口も聞こえてきた。森井は「最初は考えていることを理解されず、苦しい時期もありました」と振り返る。

 それでも、森井は自分の道を貫いた。両親は「やりたいことをやれ」と応援してくれた。チームメイトや教員たちも森井を変人扱いすることなく、サポートしてくれるようになった。

 桐朋は自由な校風もあって、強烈な個性の持ち主も多い。そんな環境も森井にとっては刺激的だった。こうして高校生活を送るうち、森井の心境にある変化が生まれた。

「最近、チームとして勝っていきたい気持ちが出てきました。友だちはみんないい人ばかりだし、先生も『キミみたいな生徒は初めて』と言いながらサポートしてくれて。温かい学校だなと感じます。チームのみんなも勝ちたい思いが出ているので、勝つには自分がスキルを上げて、引っ張っていかないと。冷たい言い方かもしれませんが『利害が一致した』という感じです」

【アメリカの大学進学も選択肢】

 その一方で、学業面も疎かにしているわけではない。1学年あたり約300人の生徒がいるなか、森井は150位前後の順位に入っているという。勉強を頑張れるモチベーションがどこにあるのか尋ねると、森井はこう答えた。

「自分は心配性なところがあって、留年したくない気持ちがありまして......」

 心配性な人間は、進学校からプロ野球を目指さないのではないか......。思わずそんな感想を伝えると、森井は「そうですよね」と苦笑した。

 あらためて進路について聞くと、森井はこんな考えを口にした。

「今は進路より自分のプレーに集中しています。いくら高卒でプロに行きたくても、自分がそのレベルに達しなければ(プロ志望と)言えないので。その意味でもこの春からが勝負だと思っています」

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