都内有数の超進学校に「二刀流」のドラフト候補 桐朋・森井翔太郎とは何者か? (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 ただし、投手としても田中監督が「伸びしろがある」と高く評価するように潜在能力を秘めている。高校から本格的に始めたばかりで、練習では最速151キロを計測するまでに成長。本人はカーブなどの変化球やコントロールにも自信を持っている。

 そして、最大の魅力は投打とも鍛え込む余地を残している点だろう。桐朋は学業優先のため、週休2日制。練習時間も短いうえに、「投手としての練習が6〜7割を占めています」と森井が語るように、野手としての技術練習は空いた時間にこなすしかない。

 また、現時点では身体操作性を重視してきたため、「今までウエイトトレーニングは1回もやったことがありません」と森井は語る。腕立て伏せ、腹筋などの基礎的な自重トレーニングだけで、たくましい肉体をつくりあげてきた。また、ヨガインストラクターの母・純子さんの指導のもと、ヨガで滑らかな動きや柔軟性を養っている。

【プロ志望のきっかけはコロナ禍】

 これほどの才能を秘めながら、森井はなぜ進学校の桐朋で野球をしているのか。森井は小学校から桐朋で過ごしてきたが、桐朋中3年時には田中監督から「本当にウチでいいのか?」と念を押されている。だが、森井は「(強豪校からの)誘いもなかったので」とそのまま高校に進学した。

 どうしてプロ野球選手になりたいのか。そう尋ねると、森井は少し困ったような表情を見せた。口ぶりから察するに、自分の言葉で説明しきれるのか不安があったようだ。

「中学2年の時にコロナ禍で学校がなくなって、何をしたらいいかわからない時期に、家で『野球を頑張ってみたい』となんとなく思ったんです。そこで本格的にトレーニングを始めて、スイッチが入った感じです。中学3年の頃には『プロになりたい』という思いがより濃くなりました」

 2020年に新型コロナウイルスが蔓延した時期は、先行きの見えない不安と閉塞感のなか、自分の人生を見つめ直す時間がたっぷりとあった。中学2年生だった森井は、さまざまな選択肢のなかで自分自身を輝かせるものとして野球を選んだ。

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