あわや20年ぶりの快挙から一転 広陵・髙尾響は昨夏に続くタイブレークでの敗戦で何を学ぶのか (2ページ目)

  • 元永知宏●文 text by Motonaga Tomohiro

 髙尾が先頭打者にフォアボールを与える。つづくバッターが三振したあと、8回に代打でツーベースと放った蝦名がセンター前ヒットで一死一、二塁。9番の関がライト前ヒットでつなぎ満塁。

 ここで1番の佐藤隆樹が左中間にスリーベースヒットを放ち、同点に追いついた。なおも一死三塁、サヨナラの好機だったが、2番がスクイズを空振りし三塁走者がタッチアウト。只石は言う。

「スクイズが来るかもしれないと警戒していました。あの球は外したわけじゃないけど、うまく空振りが取れました。デッドボールになってもいいくらいの気持ちで思いきって内角に構えました」

【昨年夏に続きタイブレークで涙】

 試合は5対5で延長タイブレークに突入した。10回表、広陵は7番の白髪が送りバントを決めて、一死二、三塁。しかし、8番の髙尾はショートフライ、つづく9番の沢田光も三振に倒れ無得点。

 中井監督は、この場面についてこう語った。

「髙尾のスクイズで1点を取ろうとも考えましたが、あまりバントがうまくないし、失敗した時のダメージが大きい。だから打たせました」

 10回裏、青森山田は3番・對馬の送りバントが内野安打になり無死満塁。つづく4番・原田純希が犠牲フライを放ち、勝負は決まった。

 広陵にとっては、昨年夏の慶應義塾(神奈川)戦に続きタイブレークでの敗戦となった。中井監督が言う。

「練習試合の時に、相手校にお願いしてタイブレーク形式で戦うこともあります。いくら練習を積んだとしても、一発勝負のタイブレークは難しい。甲子園は緊張感が違いますからね。このセンバツでは2試合ともキャプテンがジャンケンに負けて先攻になりました。広島に帰ったら、ジャンケンの練習をせんと(笑)」

 1年生の春から名門・広陵の背番号1を背負う高尾のセンバツが終わった。最後の夏まで100日あまりしかない。

 キャッチャーで4番、キャプテンの只石は「また夏に甲子園に戻ってくるために、イチからやり直します」と語った。

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