つかみどころのないキャラクターと最速151キロの快速球 報徳学園・今朝丸裕喜から目が離せない!

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 今朝丸裕喜(けさまる・ゆうき)を取材したことのある同業者から「少し変わったところのある子なので、話をすると戸惑うかもしれません」と言われていた。

 3月22日、愛工大名電(愛知)とのセンバツ初戦を終え、報徳学園(兵庫)の先発右腕・今朝丸の囲み取材に参加してみて、同業者の言葉を実感した。

 試合中に光って見えたボールについて聞いても「いや、あんまり......」と反応は今ひとつ。技術的な内容を聞いても精神的な話を聞いても、芯を食った回答が返ってこない。決してメディアに敵対感情を滲ませるわけではなく、一生懸命に考えて答えてくれているので、質問者としては自分の力不足を恥じるしかなかった。

初戦の愛工大名電戦で先発した報徳学園の今朝丸裕喜 photo by Ohtomo Yoshiyuki初戦の愛工大名電戦で先発した報徳学園の今朝丸裕喜 photo by Ohtomo Yoshiyukiこの記事に関連する写真を見る

【愛工大名電戦で7回1失点の好投】

 今朝丸は最速151キロをマークする、今大会屈指の右腕である。身長187センチ、体重80キロの長身で、指にかかったストレートは数字以上のキレと球威を感じさせる。抜けのいいスローカーブに、決め球として使えるスライダーとフォーク。ストライクゾーンにポンポンと投げ込み、試合をまとめられるコントロールも備えている。昨春のセンバツでは同僚右腕の間木歩らとともに準優勝を経験している。

 ひと冬越えて体重が8キロ増し、凄みが増してきた今はドラフト上位候補に浮上したと言っていいだろう。センバツ初戦の愛工大名電戦では先発して7回を投げ、1失点と好投。チームは延長10回タイブレークにもつれる死闘の末、3対2でサヨナラ勝ちを収めた。

 とくに光って見えたのはストレートだ。1回表には、プロ注目の強打者である石見颯真(いしみ・そうま)に対して144キロの快速球で空振り三振を奪った。さらに結果的に最後のボールとなった7回表、吉田剛から見逃し三振を奪った140キロはスピード感と球威が伴った会心の一球に見えた。

 だが、試合後の今朝丸に尋ねても、ピンとこない様子だった。

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