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京大法学部から社会人野球名門へ 水江日々生は「定数を変える思考回路」で入部を勝ちとった (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

京大3年時の春のリーグ戦で3勝を挙げた水江日々生 photo by Kikuchi Takahiro京大3年時の春のリーグ戦で3勝を挙げた水江日々生 photo by Kikuchi Takahiroこの記事に関連する写真を見る 水江は「第一先発として負けてしまった責任は大きい」と自分を責めるものの、監督の近田は「水江以外の投手を育てきれなかった」と語る。水江を限界まで引っ張らざるを得ず、傷口を広げた試合も多かった。一方で、水江は前年まで投手コーチを務めていた三原が大学を卒業し、阪神タイガースにアナリストとして入団した影響を口にした。

「ギャンブル的な起用でもうまく当ててはったので、三原さんの存在は大きかったんだなと感じました」

【京大卒業後、4名が野球を継続】

 京大には入試という極めて険しいハードルがそびえるのに対し、ライバル校はスポーツ推薦で有望な選手が入学してくる。昨秋の関西学生野球リーグで優勝した関西大には、金丸夢斗という2024年ドラフト戦線の目玉になりうる逸材サウスポーがいた。

「打球が前に飛ばないんですよ。ほかのピッチャーの150キロとは明らかに違いますよね。ベンチから見ていても、あまりボールが見えないですから。マシンのスピードを165キロまで上げて打ち込んでも、金丸くんの生きたボールは打てない。彼のボールと比べたら、自分のボールはチェンジアップやと思い知らされました」

 現実に打ちのめされても、京大野球部には芯がある。それは「リーグ優勝」という絶対的な目標だ。いくら連敗がかさもうと、水江は「来年のリーグ優勝に向けて取り組めたのは間違いない」と断言する。その強い意志は、3年生以下の後輩たちに受け継がれたはずだ。

 これから京大野球部が優勝するために、何が必要か。そう尋ねると、水江はある不満を口にした。

「これは『京大生あるある』なんですけど、『100与えられたことを100やったらOK』というスタンスの人が多いんです。でも、僕は近田さんが与えてくれるのは最低限のことだけで、それ以上を求めていかなければ勝てないと思っています。そのあたり、『わかってるかな?』と少し心配ですね」

 水江には、胸に刻んでいるふたつの言葉がある。ひとつは2学年先輩の藤井祐輔さんが発した「凡人は地図を眺め、一歩一歩確かめながら進まなければすぐに迷う」。もうひとつは、3学年先輩の和田直也さんが残した「努力は結果を曇らせる」だ。

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