京大法学部から社会人野球名門へ 水江日々生は「定数を変える思考回路」で入部を勝ちとった (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 水江は2022年春のリーグで3勝を挙げ、防御率2.09と安定した成績を収める。なお、当時の京大野球部の快進撃については、拙著『野球ヲタ、投手コーチになる。 元プロ監督と元生物部学生コーチの京大野球部革命』(KADOKAWA)を参照いただけると幸いだ。

 水江は京都の中高一貫の進学校・洛星の出身だ。高校1年秋は部員が10人しかいなかったが、水江をエースとする洛星は京都大会ベスト8まで勝ち上がる。翌年の選抜高校野球大会の21世紀枠・京都府の推薦校に選ばれた。結果的に出場は果たせなかったが、一躍注目を集めた。

 だが、高校時代について聞くと水江の表情は途端に暗くなる。

「高校では野球があまり好きではありませんでした。不思議なもので、嫌いやとうまくならへんのやなとわかりました」

 高校最後の夏は京都大会初戦で敗退。不完全燃焼だった水江は、京大に進んだ先輩が口々に「大学野球はホンマに楽しい」と語っていたことを思い出す。一念発起して猛勉強し、一浪の末に京大法学部への合格を果たした。

 京大入学当初の球速は「120キロ出るか出ないか」と水江は振り返る。それでも、監督の近田は1年生の水江に対して「社会人向きやね」と声をかけている。1年秋からリーグ戦で起用された水江は、水を得た魚のように大学野球にのめり込んだ。

「両親まで大学野球にハマっていきました。高校時代は『行けたら行こうかな?』という感じだったのが、今は仕事をずらしてまで応援に来てくれますから。高校時代は強い相手に勝てなかったのが、大学では強い相手に勝つ試合を見せられたのがよかったのかもしれないですね。親は『大学野球のほうが見ていて面白い』と言うてましたね」

 だが、大学最終学年となった2023年は試練が待っていた。春のリーグ開幕戦の関西大戦に細見宙生(2年)の逆転サヨナラ本塁打で1勝を挙げたあとは、春秋リーグを通して20連敗。水江も春は0勝5敗、防御率4.37、秋は0勝3敗、防御率3.75と勝ち星を挙げることができなかった。

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