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ドラマ『下剋上球児』放送後の反響 南雲脩司のモデルとなった熱血教師は「免許持ってんの?」と問われる日々 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 高校野球界では越境入学生が多い野球部のことを「ガイジン部隊」などと揶揄する風潮もあった。だが、少子高齢化、過疎化が進む現代では、地方の公立校でも存続の危機にさらされている。自治体をあげて県内外から生徒を募り、関係人口を増やそうという取り組みが全国的に広がっている。

 大森町長に「県外出身の生徒が入ってくることに地域住民の抵抗感はありませんか?」と尋ねると、「まったくありません」という答えが返ってきた。

「練習試合にはたくさんの人が集まって、野球部を応援していますよ」

 大森町長は昴学園の前身・荻原高校出身でもあり、高橋監督時代から熱心に野球部を応援してきた。公式戦にも頻繁に足を運び、夏の公式戦1勝にも快哉を叫んだ。東監督が指導する現チームについては、「もうひとりいいピッチャーがいたら楽しみなんやけど」と分析して笑った。

 1年生エースの河田虎優希(こうき)は愛知県一宮市出身。愛知木曽川ベースボールクラブ(ポニー)では投手兼外野手として活躍し、強豪私立から誘いの声もあった。それでも「昴学園の歴史を変えたい」と強い意志を持って進学している。大台町の町民とすれ違うたび、「頑張れよ」「頼んだよ」と声をかけられる河田はこんな思いを語った。

「試合でも応援してもらえるので、『めっちゃ頑張ろう!』と思えます。実力を上げて、粘り勝つ野球で甲子園に行きたいです」

 ユネスコエコパークから甲子園へ──。町をあげて夢に突き進む昴学園野球部に、強力な"援軍"が現れた。2018年夏の三重大会決勝で白山と甲子園切符をかけて戦った松阪商の元監督・冨山悦敬(よしたか)が、コーチとして昴学園を指導しているのだ。

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著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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