ドラマ『下剋上球児』放送後の反響 南雲脩司のモデルとなった熱血教師は「免許持ってんの?」と問われる日々 (3ページ目)
校舎のすぐ脇に流れる一級河川の宮川この記事に関連する写真を見る「周りからは『なんで昴学園に行くんや?』とよく言われましたけど、『大台町に恩返ししたい』という思いがありました。5年前になんで白山が甲子園に行けたのかはいまだにわからないですけど、もう1回行くことで『まぐれやない』と証明したいんです」
幸いにして、白山時代とは違い「ゼロからのスタート」というわけではない。5年前に昴学園に赴任した高橋が、悪戦苦闘しながらチームづくりを進めていたからだ。高橋は東の初任校だった上野高時代の教え子でもある。
高橋はこんな苦労話を語ってくれた。
「野球部員5人と助っ人7人を呼んで大会に出たら、野球部員の5人中4人が熱中症で倒れて、どんどん救急車で運ばれていきました。『迷惑かけて申し訳ないし、大会に出やんほうがええんちゃうか?』と思うこともあって。真面目に一生懸命やる子もいるんですけど、ヤンチャな子や練習しない子もいて、なかなかうまくいかない時期も長かったです。毎日、やる気の出ない子らを『どうやってやる気にさせるか?』と考えていましたね」
高橋を支えたのは、現実に奇跡を起こした『下剋上球児』だった。しょっちゅう恩師の東に電話でアドバイスを求め、白山と練習試合を組んでは「元気をもらっていた」と振り返る。東が赴任した今年も夏までは高橋が指揮を執り、17年ぶりの三重大会勝利へと導いている。現在の部員数は2年生13人、1年生19人、マネージャー2人、計34人と活気が出てきた。
【ユネスコエコパークから甲子園へ】
野球部のグラウンドはバックネットを隔てて道路が走っており、地域住民も通りかかる。東は「地域の方から『若い子が挨拶してくれて、こっちも元気をもらえる』と褒めてもらえました」とうれしそうに語った。地域には後援組織である「昴学園野球部を応援する会」が立ち上がり、そのメンバーは200名を超えている。
大台町の町民にとっても、昴学園野球部は地域の存亡をかけた希望の光である。大台町の大森正信町長は危機感をあらわにする。
「地域から学校がなくなれば、過疎化は余計に加速していきます。昴学園には県内外から生徒が来てくれますが、大台町の自然のよさを知ってもらって、卒業後に少しでも町に残ってくれたらありがたいですね」
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