「坂本勇人さんにはなれませんし、自分を磨くしかない」八戸光星学院・中澤恒貴がフルスイングに込める思い (2ページ目)
だが、その異名が選手の本質を言い表しているかといえば、疑問を覚えるケースも多い。たとえば近畿大時代の佐藤輝明(現・阪神)は「糸井嘉男2世」と呼ばれていた。元阪神の糸井が近畿大OBだったことにちなんだ命名だったが、糸井と佐藤の持ち味が異なることは当時から明白だった。今でも佐藤を「糸井2世」と呼ぶファンなどいないだろう。
【プレーヤータイプは浅村栄斗】
中澤もまた、独自の魅力がある。
本人が一番自信を持つのは打撃だ。高校通算24本塁打と飛び抜けて多い本数ではないものの、公式戦で7本塁打と密度が濃い。
そのスイングはネクストバッターズサークルでの素振りを見るだけで胸が躍る。中澤は「ボールの軌道にバットを入れるイメージ」と語るが、下からかち上げるような軌道を描く。雄大なフォロースルーから放たれる打球は、どの方向にもよく伸びる。勢いよくスイングできると、その反動でバットが手から自然と飛んでいく。
「『打ったあと、バットめっちゃ飛んでるね』ってよく言われます。反射で飛んでしまうので、無意識なんですけど。小さい頃からこのスイングですし、これからも貫いていきたいです」
一方で、守備・走塁は不得手ではないものの、突出した素養は感じられない。高校卒業後は三塁や二塁など、別のポジションで打力を生かす選択肢も考えられる。
「将来の自分の完成イメージをどのように描いていますか?」と尋ねると、中澤はこう答えた。
「売りは逆方向に長打を打てる部分なので、もうちょっと突き詰めていきたいです」
プレーヤータイプは坂本というよりも、浅村栄斗(楽天)のイメージが重なる。とはいえ、中澤にとってはこうしたラベリングも余計なお世話だろう。
【肉体改造で飛距離アップ】
そして、今夏の中澤を見て驚いたことがある。肉体がひと回り大きくなっていたことだ。昨夏は72キロだった体重が、現時点で79キロあるという。
「1年間ずっとウエイトトレーニングに力を入れてきて、毎日欠かさずやってきたので。全体的に鍛えてきましたけど、とくに重視していたのはデッドリフトです。背中を頑張って鍛えて、『もうちょっとラクにホームランを打ちたい』と思いました」
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