「高校野球は変革の時。監督も勉強をし直す必要がある」PL学園元監督・中村順司と帝京名誉監督・前田三夫の指導論 (3ページ目)
●選手を本気にさせるために必要なこと
中村 あと私は、できるだけ全員を一緒に練習させました。部員が多いと1年生なんかはなかなかボールに触らせてもらえなかったりするけど、PLでは入学して1カ月間だけは別メニューでも5月になると先輩たちの練習に混ぜ、同じ練習ができるんです。
量は少ないけど、先輩のプレーを見るだけでも勉強になる。野球はもういいやという顔は見たくなかったので、3年生の補欠選手にもできるだけ同じ練習をと思っていました。
指導論を熱く語る中村氏この記事に関連する写真を見る前田 私も大学時代は補欠でしたから、補欠でも生きる道はあるんだということをずっと教えたかった。補欠の子が頑張るとレギュラーと補欠の歯車が合って、そういう時はほとんど甲子園に行けましたよ。それと私が特にこだわったのが、常に緊張感のある練習にするということ。ピリッとした空気をつくる。そのために監督がいると言ってもいいくらいです。
中村 PLは練習中に音楽が流れたりする独特の雰囲気でしたが、空気は引き締まっていましたね。緊張感は絶対必要、そのために我々の言葉がいるわけです。
前田 そういう時、関西弁っていいなって思うんですよ。ワーッと言ってもきつそうできつくない。
中村 そう、それはあるかもしれない(笑)。
前田 やっぱり、選手を本気にさせなくちゃいけない。お前はまだまだやれるぞと、引っ張り上げてやる。選手というのは内に秘めているものを必ず持っているから、とことん練習したあとに思いきって野放しにすると力を爆発させるんです。そんな姿を見るのがじつに楽しく、指導者冥利に尽きる瞬間でした。
監督時代、グラウンドで選手と汗を流し続けた前田氏この記事に関連する写真を見る中村 本気にさせるには、口だけじゃなくて自分も動かないと。私ももとはショートだったから、片手にグローブを持ち、野手の間を行ったり来たり。教えることが何より好きでした。
前田 選手と一緒になって汗を流す。一緒に打って守って、そのなかで苦しみを分かち合うい、それが教育にもつながると思います。私はノックの時、自ら内野に入ったりもしたんです。その横で選手がうまくさばいた時は、ナイスプレーと褒める。そうするとうれしそうな顔をして、自信になるんですよね。
中村 私の場合、選手と接するのにPL教の教えが大きかったなと思うんです。カバーリングではどう動いたら仲間が助かるのか、ランナーを進めるためには自分に何ができるかなど、「世のため人のため」という教えが根底にあったので指導しやすかったですね。
前田 中村さんはよく、「球道即人道」という言葉を使って指導されていました。
中村 これもPL教の教えで、野球を通じて人としての生き方を学ぶ。相手がいる前での派手なガッツポーズなどは好きではなかったし、いい加減なプレーをしたらそれは人の道にはずれること。グラウンドには社会の縮図があるとよく言っていました。
前田 まさに教育者としての目線ですね。
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