坂本勇人級の大型遊撃手が奥信濃にいる! 日本ウェルネス長野・杉浦匠がこの夏本格化 (2ページ目)

  • 安部昌彦●文 text by Abe Masahiko

【強豪校から圧巻の2発】

「1、2年の頃は体が大きいだけで、ほんとに打てなかったですから」

 杉浦の武骨で実直そうな語り口に"昭和"の匂いがした。

「そうですね」とかあいづちをうたず、ボソボソっと話を切り出してくる感じが、高倉健のようだ。

「もともと不器用で、なんでも繰り返し、自分の体に刷り込むように反復して覚えてきたことばかりで......」

 バッティングも去年の今頃までは、下半身の動きを使わず、上体の強さに任せた強引な打ち方だったという。

「上(半身)だけで打っていたので、右ヒザが割れて体がすぐ開いていたんです。自分でも打てそうな感覚があまりなかったんですけど、足を使って、下半身主導のスイングができるようになって、バッティングが変わってきました。この春ぐらいからはヒットも増えたし、ホームランも打てるようになりました。この春からだけで20本近く打っていると思います」

 ペースとしては驚異的な量産態勢だ。

 じつは、杉浦についての"追加情報"は、北信越の高校野球に詳しい人から聞いていた。

 今年5月、日本ウェルネス長野の関東遠征。クリーンアップを打つ杉浦は、土曜日に行なわれた横浜高戦でレフトにライナーで放り込むと、翌日の東海大相模戦ではセンターバックスクリーン右に飛び込む一発を放ったという。

「初めての感触でした。インパクトの衝撃がほとんどなくて、打った瞬間『あっ、いったな』って。ピンポン球みたいって言うんですかね」

 自己申告だが、東海大相模戦は130メートル級の一発だったという。

「右半身にカベをつくっておいて、うしろから前に(バットの)ヘッドを走らせて、体の正面で返してボールを運ぶ。そんな感覚ですかね。変化球はレベルに、真っすぐはバットのヘッドをタテに入れる感じです。体が開かなくなってからボールがよく見えるようになったんです。低めのボールになる誘い球も、けっこう見極められるようになりました」

 打線の核としてチームを牽引しようとする者の矜持が、じわじわ伝わってくる。

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