「来年のドラフトの目玉」と称される鳥谷敬以来の大物 明治大・宗山塁は数字だけでなく「スター性がある」 (3ページ目)
最後に、宗山にどうしても聞いてみたいことがあった。
宗山がまとう独特なムードは無意識に発せられているのか、それとも意識してオーラを放っているのか。自分より20歳も年下の大学生に聞く質問ではないような気もしたが、聞かずにはいられなかった。
てっきり困惑されて終わりだと思ったら、宗山は少し考えてから筆者の目を見て真面目に答えてくれた。
「昔から野球をしている人のなかで『カッコいい』と思える選手が好きで、目指してきたところがあります。一生懸命やりながらも自分の世界観があって、自分の間(ま)のなかでプレーしたいと思っています。野球は相手がいるので、相手の間に左右されがちなんですけど、いつもどおりの力を出すために自分のリズムで相手に崩されないことを考えています」
この言葉を聞いて、私は宗山塁という野球選手の本質に行き着いたような気がした。宗山がよくコメントする「冷静なプレー」というなにげない言葉の背後には、自分の実力を発揮するための思考が張り巡らされている。「哲学」と言い換えてもいいかもしれない。
そして、宗山はなおも進化している。課題だった走力も、大学進学後のトレーニングの成果で向上している。光電管計測の50メートル走タイムは昨年12月の松山合宿での6秒48から6秒31に。本人も「まだ速くなると思います」と手応えを深めている。あとは打撃面に一層の力強さが出てくれば、手がつけられない選手になりそうだ。
1年後の秋、宗山はどこまで進化し、どんなムードをまとっているのか。ユニホーム姿だけでも見にいきたいと思わせる野球選手は希少だ。
だが、今まで以上の人気を得ようと、喧騒に巻き込まれようと、宗山は変わらない。いつも冷静に、自分の間合いでプレーし続けるはずだ。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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