「1回負けたら終わり」では選手は育たない 高校野球のリーグ戦「リーガ・アグレシーバ」の存在意義と可能性 (3ページ目)
一方、ベンチメンバーにも"視点"を変える効果があった。森林監督が語る。
「関東大会の登録選手はサポートに周り、『自分たちはこうやっていつも支えてもらっている』と認識できました。チーム内の立場を変えられたのもよかったです」
立命館宇治は2021年秋、大阪のリーガに初参加した。京都ではほかに参加校がなく、2015年に全国で初めて立ち上がった大阪のリーガに混ぜてもらった。
メンバーは1年生を中心に、大学に進学して野球を続ける3年生が数人加わる。1年生は実戦経験を積める一方、夏に引退した3年生は大学進学までのプレー機会ができ、木製バットを試合で使えるのも大きい。
2019年に甲子園出場を果たした立命館宇治のような強豪の場合、同じチームでも3年生と1年生が一緒にベンチ入りすることは珍しい。リーガに参加することでそうした機会が生まれ、同校の里井祥吾監督はプラスの効果を感じている。
「1年生は3年生を『うちの4番や』『エースや』という目で見ていると思うので、そういう人と一緒に野球をできるのはいいことだと思います。3年生がアドバイスしてくれていますが、僕らが言うより影響力もありますしね」
【リーグ戦だからこそできること】
リーガは非公式だが、"枠組み"をつくることで選手たちの刺激になる。チームの勝敗や順位、首位打者や最多勝など個人成績を競いながら、アグレッシブにプレーすることで成長できる。大阪府立旭高校の3年生・上野湧也が言う。
「失敗しても次があるので、自分がやりたいことを試合で試せるのが一番いいと思います」
同じく旭高校の安藤和真が大きく頷いた。
「負けたら終わりではないので、自分が試したいことをリーガで実践し、数字として結果が出る。課題を見つけて冬に取り組んでいく。そういう機会ができてよかったです」
PDCA=Plan(計画)、Do(実践)、Check(確認)、Action(対策)という成長サイクルの重要性は幅広く認知されたが、大切なのは緊張感のある舞台で実行することだ。負けたら終わりのトーナメントではなかなか試せないことを、リーグ戦では積極的にトライできる。
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