「1回負けたら終わり」では選手は育たない 高校野球のリーグ戦「リーガ・アグレシーバ」の存在意義と可能性 (2ページ目)

  • 中島大輔●文・写真 text & photo by Nakajima Daisuke

 前述したアフターマッチファンクションに加え、リーガには独特の取り組みがいくつもある。

・球数制限(1日100球まで)
・変化球の制限(カーブとチェンジアップのみで投球全体の25%以内)
・登板間隔ルール(MLBのピッチスマートを参考に導入)
・木製or低反発バットの使用
・DH&再出場制度
・1日2試合=18イニングのうち、1人が出場できるのは12イニングまで
・送りバントの制限(1試合2回まで)
・試合終盤には無死一、二塁や無死満塁など状況設定してイニングを開始
・スポーツマンシップ講習
(※上記はあくまで目安で、細かいルールは各都道府県のリーグごとに規定)

 こうした規定が定められる理由は、故障の防止と、多くの選手に出場機会を与えるためだ。「今」だけでなく「将来」羽ばたけることを重視し、さらに「アグレシーバ」=「積極性」を大切にしている。

【スポーツマンシップの理解】

 リーガは基本的に秋の10月から11月末に各都道府県で行なわれる。神奈川県では昨年開始。その中心になったのが慶応高校の森林貴彦監督だった。

「リーガの理念を共有したくて、私立だけでなく公立の先生方にも話して共感してもらったところと一緒に始めました」

 負けても次があるリーグ戦で、スポーツマンシップを理解して相手と一緒に好ゲームをつくっていく。そうした趣旨を理解することで選手たちのマインドは大きく変わった。森林監督が続ける。

「トーナメントだと、どうしても相手を『やっつけなければいけない敵』という関係になってしまいます。でも東京六大学では卒業後、同じリーグを戦った仲間は『同期』という絆が強い。リーガをやることで、同じ高校野球を一生懸命頑張っている仲間という意識が強くなるのは大きいと思います」

 慶応では秋の関東大会までベンチ外だったメンバーを中心に、リーガに参加した。オープン戦の機会に恵まれなかった彼らは背番号をつけてリーガで出場し、「チームの代表」というモチベーションが生まれた。

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