「1回負けたら終わり」では選手は育たない 高校野球のリーグ戦「リーガ・アグレシーバ」の存在意義と可能性 (4ページ目)
立命館宇治の3年生右腕、杉村颯太はリーガをきっかけに不可欠な戦力になった。1年時は球速120キロでカーブ、スライダー、チェンジアップで交わすタイプだったが、「変化球は全投球の25%」というリーガをきっかけに"スタイルチェンジ"できたという。
「以前は『自分の真っすぐでは打たれる』と変化球ばかり投げていたけれど、自分の真っすぐでも押せることがわかりました。それから真っすぐの質を高めていくことができました」
現在は球速136キロまでアップ。大学でも野球を続けたいと立命館宇治に学業推薦で入った杉村は自信をつけたことに加え、試合後の交流もプラスに働いた。
「僕は胸郭が硬かったので、相手チームの選手から柔軟性を上げるトレーニングを教えてもらって実践し、柔らかくなってケガも減りました」
リーガの特徴のひとつに、低反発か木製バットを使うという規定がある。先述した旭高校の安藤は投手と外野手を務めるなか、投打ともに利点を感じている。
「低反発バットでも、芯で捉えた打球は飛びます。そういうバットを使うことでミートアップできると解釈しているので、打撃でも成長する幅が広がります。金属バットなら、当たり損ないでも普通に飛んでいきますよね。でも、低反発なら芯で捉えないと飛ばないので、ピッチャーとしてはストレートでガンガン勝負できる。だから自分の得意なコースも見つかりました」
旭高校では、ふだんから竹バットか低反発バットで練習している。そうしてバットを内側から出すスイングを身につけ、リーガで試し、公式戦では反発係数が高い金属バットで「打ちやすい」と感じる。そうした好循環があると上野は話した。
【リーガ・アグレシーバのこれから】
一方、立命館宇治の里井監督は「リーグ戦のなかで成功体験を積めるのが大きい」と感じている。同校の西田透部長は京都府高校野球連盟の理事も務めており、リーガの輪をもっと広げていきたいと京都府立の乙訓高校、東宇治高校に声をかけて2022年は京都でリーグ戦を実施、勝ち上がったチームが大阪リーグの勝者と対戦した。
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