甲子園初の女子マネノッカーはネットの中傷に「怖くなることも...」 城東・永野悠菜を支えた監督と選手の言葉 (2ページ目)
●心の支えとなった監督と選手の言葉
この時点では「甲子園でバタバタすると思うから、みんなに迷惑をかけないようにしたいです。ノックを打つことがプラスにだけ働くように」と語り、永野さんの心のうちはまだ揺れ動いていた。
振り返れば、永野さんは昨年4月、夏の県大会に向け「(当時の)3年生のために、もっと野球部に直接関われるようにノックを打ちたい」と自らノッカー役を名乗り出た。中学ではオーケストラ部で、野球の経験がないなかで練習を地道に続けてきた。
それにもかかわらず、ネットの心ない言葉などによって甲子園直前に不安を抱えていた。そんな彼女を部員たちが見過ごすわけはなかった。
永野さんと同じ中学で「僕たちが甲子園に連れて行くから」とマネージャーに誘った森本凱斗主将(3年・捕手)は「永野さんが甲子園でノックを打てることに感謝しているし、チームの一体感も高まると思います」と期待を託した。吉田優選手(3年・遊撃手)は「彼女が伸び伸びとノックを打てるようにしたいです」と話していた。
チームの要である森本凱斗主将(中央)この記事に関連する写真を見る そして、新治監督は甲子園で自身の外野ノック後、内野ノックを引き継ぐことになる永野さんに対し、熱い思いを語っていた。
「毎朝7時から朝練を続けていた彼女が、甲子園でノックを打つ。正直、大人たちは『無理だから』とか『諦めなさい』とかたくさん言っていましたけど、ブレずにやってきたことで、社会が変わり伝統ある高校野球の歴史の1ページが変わる。素直にうれしいです。
彼女によく言っているのは『うまいノックを打とうとせんでいい。どういう気持ちでノックを打つかが大事や。俺も初めて甲子園でノックを打つんで不安なんやで(笑)』と。永野とは一緒に悩んできたと思うので、甲子園では一緒に楽しみたいです」
それでも甲子園出発前、永野さんの心は限界点を超えた。あまりの緊張から顔面蒼白になって「不安なんです」と告白するなり、涙をこぼした。そこで、新治監督はこう激励した。
「本当に不安だったら俺が打つぞ。でも俺も不安で仕方がないんや。選手も一緒やぞ。一緒にやらんかい」
永野さんは周囲の支えもあって「応援してくれる人たちのためにもノックを打ちたい」と前を向いた。
1月4日、練習初めで外野ノックを打つ永野さんこの記事に関連する写真を見る
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