「異色の経歴を持つ元高校生独立リーガー」BC茨城の渡辺明貴は、湯浅京己、宮森智志に続く掘り出し物となるか? (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • 写真提供/茨城アストロプラネッツ

"原石"が磨かれるきっかけとなったのは、2021年オフだった。茨城球団から山中尭之(たかゆき)がオリックス、大橋武尊がDeNAにそれぞれ育成枠で指名され、松田康甫(こうすけ)がロサンゼルス・ドジャースとマイナー契約を結んだ(今季途中にリリース)。チームメイトとして喜ばしいことだが、同時に悔しかった。

 とくに同じ右腕投手の松田は1学年上で、「1年後にこうなっているためには、何をやればいいんだろう」と考えた。そうして小山田にメニューを組んでもらい、ウエイトトレーニングに精を出した。

 冒頭で「トレーニングをやったことがないような感じ」という小山田のコメントを紹介したが、渡辺本人は「やっていた」と言う。

「同じようなことをずっとしていたんですけど、筋肉を効かせる場所が違ったというか、ただ漠然とやっていた部分がそれまでは多かったです。『体のここをこうやって使うと、投げるときのこの動作で力を発揮できる。だから、こういうトレーニングをするんだよ』と頭でちゃんと理解してやるようになり、成果がだいぶ変わりました」

 帰りの車を運転している際、ビニール袋に嘔吐するほど自分を追い込んだ。体が拒絶反応を示していると感じたが、それでもいっさい手を抜かなかった。

自己投資は惜しまない

 成果が表れ始めたのが、今年8月頃だった。ストレートは常時148〜151キロほどと球速帯が安定するようになり、ベース上でコントロールできるようになった。前年は投げたあとに体を痛めることも珍しくなかった一方、今年は元気に投げ続けた。トレーニングを重ね、身体ができてきた証だった。

 投球メカニクスについては、前述の内田から学んでいる。今年8月に独立リーグの始球式で150キロを記録するなど、自身を実験台として野球理論のアップデートを続ける内田から得るものは多い。

 さらに最近、プロ野球選手も数多く通う『DIMENSIONING』の北川雄介トレーナーのジムでも学び始めた。BCリーグの選手は月給10〜15万円と決して恵まれた環境ではないが、「NPB球団との契約金で、すべて賄える」と自己投資を惜しまない。

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