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春夏連覇に挑んだ大阪桐蔭は本当に「絶対王者」だったのか。指揮官が語った「歴代13番目くらい」のチームの葛藤と成長 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 事実、データ班の見立ては的中することとなる。初回に2点を挙げて一気にペースを握るかと思われたが、その後、攻めきれずにいると、徐々に下関国際が持ち前の粘り強さを攻守で発揮。試合は僅差のまま後半戦に突入した。

 それでも最後は大阪桐蔭が逃げきり、この一戦が連覇へのターニングポイントになったというストーリーが頭のなかに浮かんでいた。なぜなら、マウンドには切り札・前田悠伍が立っていたからだ。

前田悠伍の快投で始まった快進撃

 このチームの快進撃は昨年秋、当時1年生の前田の投球とともに始まった。ボールのキレ、質、強さ、制球力、フィールディング、メンタル......勝てる要素を備えたサウスポーへの信頼は絶大だった。

「前田がいる」という安心感のなか、それまで実戦経験に乏しかった野手が育ち、先輩投手陣も刺激を受けて成長した。

 背番号1をつけたことはなく、西谷監督も明言することはなかったが、このチームのエースは前田であることは起用を見ていれば明らかだった。

 今年夏の大阪大会では不安を感じる場面もあったが、履正社との決勝ではしっかり修正し、8回無失点。甲子園では2回戦の聖望学園戦に先発し、5回を投げて1安打、9奪三振の好投。あとは勝ち上がっていくなかで、前田をどう起用していくか。それこそが連覇のカギだと思っていた。

 下関国際戦で前田がリリーフでマウンドに上がったのは5回表。大阪大会で20イニング無失点だった先発の別所孝亮が追いつかれて2対2の同点となり、なおも二死一、三塁の場面だった。想定よりはやや早めのスイッチだったかもしれないが、この時点で十分な地力を感じていたであろう下関国際に対し、後手に回ることなく切り札を投入。ある意味、大阪桐蔭にとっては盤石の継投だった。

 前田は勝ち越した直後の6回表に1点を許し、一度は追いつかれるも、再びリードしたあとの7、8回はテンポよく下関国際打線を無失点に抑えた。この時点で、かなりの確率で勝利を確信したのだが......。

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