仙台育英VS下関国際、甲子園決勝の行方は? 両校ともに粘りの打線と継投策が特長、監督同士の読み合いが興味深い (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 どちらも長打を量産するような打者はいない。だからこそ、変な欲は出さない。大阪桐蔭・前田悠伍、近江・山田と大会屈指の好投手を攻略した下関国際はバットを短く持ち、チームでやるべきことを徹底した。対山田について、坂原秀尚監督はこう言っている。

「どちらにするかは個人個人に任せましたが、足を高く上げないようにするか、早めにステップして待つようにしようと。ボールが見えてなかった子に関しては、見逃し三振でもいいから2ストライクから『待て』のサインも出したりしました」

 聖光学院戦で19安打18得点と打線が爆発した仙台育英だが、須江航監督は試合後、このように語った。

「大物打ちができるプロに行けるようなパフォーマンスを持っている選手はいない。現実的に考えればそんなに打てるチームじゃない。身の丈にあった、つなぐ意識がすばらしかった」

 初戦から打撃好調だが、自分たちの実力を過信することなく、いつもどおりの打撃を貫いていることが好結果につながっている。

積極的に仕掛ける指揮官

 もうひとつ、両チームには共通点がある。それは、監督が積極的に試合を動かすということだ。仙台育英・須江監督は4試合でスクイズを5度も敢行(成功は2)、ヒットエンドランも9度試みている(ランエンドヒットは除く)。

 一方の下関国際・坂原監督もスクイズを2度敢行(2度とも成功)。ヒットエンドランは5度仕掛けている。打つだけでは点がとれない。足を絡めた攻撃をすることで投手の集中力を分散させ、失投や暴投、制球の乱れを誘う。これが両校の戦い方。決勝もお互いのベンチワークが勝負になる。

 注目したいのは、バッテリーがいつピッチドアウトやウエストを使うか。相手に足技を意識させるためにも、両監督ともに序盤から失敗覚悟でエンドランを仕掛ける可能性が高い。相手が動くカウントで外すことができれば、流れを呼び込めるだけでなく、その後に作戦を仕掛けづらくさせることができる。外すサインはベンチから監督が出すことが多いだけに、監督同士の読み合いが興味深い。

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