仙台育英・須江監督は采配ミスの連続にも「恐怖に負けて投げ出すわけにはいかない」と信念を貫く (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

采配ミスでは揺らがない信頼関係

 試合後、須江監督はまずは自分の非を認め、選手を称えた。

「監督のミスを選手がよく修正してくれました。1打席1打席、自分が感じたことをチーム内で共有して、得点したイニングにつながったと思います」

 どうしても須江監督に聞いてみたいことがあった。監督の自分が動くことで、試合が悪い方向へと転がっていく。そんな恐怖にとらわれることはないのだろうか? そう聞くと、須江監督はうなずきながらこう答えた。

「前半にああやってスクイズを失敗したり盗塁がアウトになったりすると、なんか『ダメな日なんだな』って思うことはあるんです。でも、その恐怖に負けて365日、または2年と数カ月の積み重ねを投げ出してしまうわけにはいかないので。積み上げてきたものと向き合わないといけません。

 あとは冷静になって『この試合が求めているものは何なのかな?』って常に考えているんです。バックネット裏で自分がのんびり試合を見ている感覚で、もう1回見つめ直す。その結果が『さらにいく』ということであれば、いくしかない。そういう感覚でやっています」

 実際にグラウンドで戦うのは選手である。だが、選手は指導者が掲げる理念のもとで日々を過ごし、集大成となる公式戦を戦っている。

 須江監督と仙台育英の選手たちが積み上げてきたものは、多少の采配ミスでは揺らがなかった。

 次戦は投打にタレントを揃えた難敵・明秀学園日立(茨城)との3回戦を迎える。全国の頂に登るまで、彼らは信念を貫き戦っていく。

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