代表候補合宿で大物スラッガーが猛烈アピール。中京大・澤井廉は「全打席ホームランを打ちたい」 (3ページ目)

  • 菊地高弘●text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 そこで澤井は、蛭間の思考力や知識量に驚かされた。

「蛭間には打席での呼吸の使い方について教えてもらいました。ピッチャーが投げる時にフーッと息を吐いて腹圧を高めて、打つ瞬間に息を止める。そうすると、力が入りやすくなるんです。合宿から帰ってきてからは、ずっと意識して練習しています」

 大学日本代表候補という立場で見れば、澤井と蛭間は代表入りをかけたライバルになる。だが、澤井のなかでそんなギスギスした感情はない。

「自分は自分の持ち味を出せればいいかなという考えなので。実力で選んでもらえたら、それでいいです」

 合宿中の紅白戦で、蛭間は7打数5安打、澤井も冒頭のフェンス直撃打を含む5打数3安打1四球とアピールに成功した。代表監督の大久保哲也監督(九州産業大)は合宿終了時、印象に残った打者として蛭間と澤井のふたりの名前を挙げている。バックネット裏に陣取ったスカウト陣にも、澤井廉の名前は強烈な印象とともに刻まれたはずだ。

 だが、いくらアピールに成功したように見えても、澤井のなかに満足感はない。

「どんなに打っていても、満足しないので。練習でも試合でも、全打席ホームランを打ちたいと思ってやっています。全打席ホームランを打つまでは、常に課題が見つかりますから」

 あまりに非現実的な言葉に、思わず「欲張りですね」と漏らすと、澤井は深くうなずいてこう答えた。

「本当に欲の塊(かたまり)ですね。野球だけは自分でこれだと決めたことに対して、グーッと深く入っていっちゃうんです。筋トレも栄養学も大好きで勉強しているんですけど、今はとくに体の使い方が大切だと思って、とことん熱中しています」

 全打席ホームランを打つまでは──。脇目も振らずに突き進む澤井廉の道では、大学日本代表もドラフトも通過点にすぎないのだろう。2022年に注目すべき大学生スラッガーは、愛知県豊田市の中京大グラウンドでひっそりと腕を磨いている。

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