「離島のハンデ」を乗り越え、センバツ出場。なぜ大島高校は甲子園までたどり着けたのか
「今まで体験したことないくらい、知り合いから連絡がきました。歩いていてもよく話しかけられますし、島が盛り上がっていることをすごく感じます」
大島高校野球部の主将を務める武田涼雅は、1月28日の選抜高校野球大会(センバツ)出場決定後から周囲の祝福攻めにあっていた。
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【九州大会で怒涛の快進撃】
奄美大島は鹿児島港まで航路383キロ、フェリーで12時間前後かかる離島で、人口約4万人が暮らす。そんな島の高校が昨秋の九州大会で準優勝と大躍進を遂げ、今春のセンバツ出場を決めた。大島高校は8年前の2014年にもセンバツに出場しているが、前回は21世紀枠での選出。一般枠では初めての選出になる。
奄美大島といえば毒蛇のハブが有名で、野球部員はボールを探す際は専用のトングで草をかき分けてハブに噛まれないよう工夫している。だが、エース左腕の大野稼頭央はこともなげに言う。
「ハブは見つけても逃げられるので、あまり気にしません。むしろ山から下りてくるイノシシのほうが怖いですね。間近で2メートルくらいのイノシシを見たことがあります」
大島躍進の原動力になったのは、間違いなくエースの大野である。細身ながら最速146キロのキレのあるストレートと、緩急を駆使して打たせて取る投球が持ち味。今やプロスカウトも注目する存在だ。
主将の武田によると、大野と捕手の西田心太朗は「中学の時から島で別格だった」という。ふたりとも名門・鹿児島実業からスカウトされていたが、示し合わせて大島に残ることを決める。最終的に大野を誘ったのは、西田だった。
「中学3年の時に『離島甲子園』に出て、ベスト4まで勝ち進んだんです。選抜チームで島の仲間たちと一緒に野球をするのが心から楽しくて、高校でも大島から甲子園に行きたいと思ったんです」
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