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怪物・松井秀喜を抑えた大阪桐蔭の「もうひとりのエース」。バッテリーにとって「ドラマのような試合」だった (5ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Kyodo News

 大阪桐蔭の「もうひとりのエース」を勝利投手へと導いた、白石は感慨深げに言う。彼もまた、勝利の立役者だった。

「あいつは一度もエース番号をつけられなくても、黙々と自分の役割をこなしていましたからね。精神的に強いヤツなんです。だからこそ、私は『絶対に背尾を勝たせたい』と思ってリードしましたし、松井を完璧に抑えて勝つことができましたから。バッテリーにとってドラマのような試合でした」

 その右腕、その投球で「勝てない」という宿縁と決別した星稜戦のヒーローは、試合後の整列でニヤニヤしながら隣に駆け寄ってきた和田に、耳元で囁いた。

「俺も明日は投げへんからな。頼むわ」

 初出場チームの決勝進出は、87年の常総学院以来、4年ぶり24校目。入学時から日本一を見据えてきた個性派軍団は、今まさにその頂を視界に捉えようとしていた。

 決勝の相手は沖縄水産。

 2年連続で頂上決戦へと快進撃を続け、沖縄県勢初の悲願を背負うチームと満身創痍のエースは、すでに甲子園を味方につけている。波乱の大一番が、幕を開けようとしていた。

つづく

(文中敬称略)

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