超進学校のサプライズなるか。165センチ、138キロ左腕がプロ志望届を出した理由

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Sankei Visual

 ドラフトまで2週間を切り、ひとりのサウスポーのことが気になっていた。長曽我部健太郎。一度耳にすれば簡単に忘れない名前に、身長は今夏の大阪代替大会で背番号1をつけた169人中7番目に低い165センチ。しかも大阪の超進学校・北野高のエースを務め、渡辺健士監督が「うちの野球部にとっては20年、30年にひとりのレベルじゃないかと思います」と言うほどの実力者である。

プロ志望高校生合同練習会に参加した北野高校の長曽我部健太郎プロ志望高校生合同練習会に参加した北野高校の長曽我部健太郎 6月には関西版のスポーツ紙の裏一面に同校OBで、元プロ選手の「浅岡三郎に続く」との見出しで大きく紹介された。

 代替大会の活躍も記事になり、4回戦の興国戦では好投手・浅利太門と互角に投げ合った(結果は0対2で敗退)。

 この試合を観戦したが、左ヒジがしっかりと上がり、165センチの身長を感じさせないほどの角度があり、ストレートは回転の効いた良質な球筋だ。打者の内角をしっかり突け、そこへスライダー、チェンジアップ、カーブといった変化球も駆使。

 この先、大学でどのように成長するのだろうと思っていたら、代替大会の敗戦からしばらくして、長曽我部は甲子園球場で行なわれたプロ志望高校生合同練習会に参加していた。

 この練習会はその名のとおり、プロ志望届を提出した選手のみ参加できる。たしかに長曽我部は好投手ではあるが、ストレートの最速は138キロとものすごい速い球を投げるわけではない。現段階でプロが指名するかと問われれば「?」である。

 まして府内屈指の進学校に通い、夏前には大学進学を目指しているという話も耳にしていた。そんななか、プロ志望届を提出して練習会に参加。話題性も可能性を秘めた18歳がどんな未来図を描いているのか。長曽我部の本心を知りたく、北野高校へと向かった。

「ドラフトについては、正直なところ指名されたらラッキーぐらいの気持ちでいます」

 開口一番、その言葉を聞いて、失礼ながらホッとした。個人的には、焦ってプロに行かなくても大学でじっくり鍛えてからとの思いがあったからだ。それでもプロへの思いはきっぱりと口にした。

「プロは子どもの頃からの目標なので、最終的に行きたい気持ちはかなりあります」

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