公立の名将が狙う3度目の甲子園。
攻撃野球でヒガハリ旋風を巻き起こせるか
「いやー、長かったですね」
県立東播磨高を率いて今年で7年目になる福村順一監督は、秋季兵庫大会の準々決勝で育英に1−0で勝利したあと、開口一番そう語り、大きく息をついた。
その後も東播磨は準決勝で長田に勝利し、決勝で神戸国際大附に0−2で敗れたが、10月17日から始まる近畿大会への出場を勝ち取った。
自身3度目の甲子園を目指す東播磨・福村順一監督 福村監督の名前を聞いて、ピンとくる高校野球ファンもいるだろう。前任の県立加古川北高では2008年夏にチームを甲子園へと導き、2010年秋の近畿大会で当時1年生だった藤浪晋太郎(現・阪神)擁する大阪桐蔭に2−0で勝利しベスト8入り。翌春のセンバツでもベスト8入りするなど、春夏合わせて2度、甲子園に出場している。
加古川北で徹底してきたのは、隙のない走塁をモットーとした攻撃野球だった。
「攻撃的になるのはバッティングだけではなく、守備も走塁も。どんな状況でも攻め続けるのが、私の掲げる野球なんです」
一塁までの全力疾走は当たり前。出塁すれば、初球から積極的に次の塁を狙う。守備でも決して受け身になることなく、常に相手にプレッシャーをかけ続ける。これを評して"福村野球"と呼ぶ人もいる。
福村監督が加古川北から母校である東播磨に転任したのは2014年の春。11年間指揮を執った加古川北で築いてきたものを、また一から指導しなくてはいけなくなった。だが、福村監督に戸惑いはなかったという。
「まったくゼロの真っさらな状態で、基礎からしっかり積み上げていける。そのほうが教えやすいと思っていました」
だが、戸惑いを隠せなかったのが東播磨の野球部員たちだ。
加古川北は甲子園に出場したこともあり、野球のうまい、技術のある県内の中学生が進学するようになっていた。それに比べて東播磨の部員たちは、甲子園を目指すというよりは高校野球をまっとうしたいという者がほとんどだ。
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