スカウト「ここまで伸びるか!」。
智弁和歌山・小林樹斗が自己最速を次々更新

  • 沢井史●文 text by Sawai Fumi
  • photo by Sawai Fumi

◆「甲子園交流試合」絶対注目の好投手たち>>

「ここまで伸びる高校生もいるんだなと思ったよ」

 智弁和歌山・小林樹斗に対するプロのスカウト評を聞くと、こういった驚嘆の声をよく聞く。

和歌山の独自大会で自己最速の152キロをマークした智弁和歌山・小林樹斗和歌山の独自大会で自己最速の152キロをマークした智弁和歌山・小林樹斗 小林といえば、昨春のセンバツの準々決勝の明石商戦で2年生ながら147キロをマーク。「こんな2年生右腕がいるのか」と、その名は一気に全国に広まった。

 夏の甲子園でも初戦の米子東戦で148キロを出すなど成長をアピール。3回戦の星稜戦では、中谷仁監督は「(相手エースの)奥川(恭伸/現・ヤクルト)くんと投げ合って、何かを感じでほしい」と150キロ右腕のエース・池田陽佑(ようすけ/現・立教大)ではなく、小林をマウンドに送り出した。

 だが初回からピンチを背負い、リズムを保てないまま4回途中でマウンドを降りることになった。チームも延長14回の末、サヨナラで敗れた。

 秋からはエースとなり、大きな期待を背負っていくはずだった......。しかし、小林の状態は上がらなかった。和歌山大会で優勝、近畿大会でもベスト8に入ったが、中谷監督は「(小林)樹斗のおかげで勝てたという試合はひとつもなかった」と厳しかった。

 いったい何が原因だったのか。甲子園デビュー直後から順風満帆に来たことで、さらに上を追い求めすぎたゆえに、それが力みにつながりバランスを崩してしまった。

 冬場は"体のベースアップ"をテーマに、下半身のウエイトトレーニング、走り込みなど徹底的に鍛え込んだ。

 コロナ禍の影響で自粛を余儀なくされた春先も「冬にやってきたトレーニングをずっと続けてきた」と継続。下半身はひと回り大きくなったが、栄養のバランスを考え、食事の量を調整した結果、体重はまったく変わっていないという。

「体のベースアップができたことで、ストレートはスピードだけでなくキレも増えましたし、(トレーニングの)成果は数字に出てきていると思います」

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