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高校で野球を終える3年生のリアル。
帯広農は空中分解寸前だった (4ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • photo by Kyodo News

「公立高校の大半の選手は、高校で最後。普通の高校生にとって、最後の大会は(競技生活に)終止符を打つ場なんです。これは野球だけじゃありません。だからこそ、大会をやってほしいと思っていました。高体連がものすごく早く(インターハイ中止を)決断したのも疑問でしたし、一部のスポーツ紙が高野連の発表よりも前に甲子園中止の記事を出したことにびっくりしました。もっと高校生の気持ちを考えてほしいですよね」

 現場で選手を預かる立場としての率直な気持ちだろう。同じ高校球児でも、強豪校と普通の公立校では意識も違えば、野球に対する考え方も違う。

 夏の甲子園中止が決まったあと、大阪桐蔭の選手たちは木製バットで練習を始めたという。中京大中京の何人かの選手たちとも話をしたが、すでに気持ちを切り替えていた。それは、ほとんどの選手が高校卒業後も野球を続け、なかにはすでに進学先が決まっている選手もいるからだ。

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 だが、高校で野球をやめる選手たちにとって、夏の大会は、高校生活、そして競技人生の集大成の場である。

 幸い、3年生にピリオドを打つ場は用意された。帯広農ナインにとっては、一度はあきらめた甲子園が、高校野球最後の舞台になる。

「甲子園は1試合しかないですけど、どれだけ自分たちの野球"すず野球"(帯広農が掲げるキャッチフレーズで『す』はスピード、スマイル、素直さ。『ず』は頭脳的、ずば抜けたものを持つという意味)ができるか。夢の舞台でしっかり楽しんでやりたい」(梶)

「全力疾走、(守備につく際に)ファウルゾーンを走るなど、礼儀からしっかりやって、甲子園にふさわしいチームだと周りから思ってもらえるようにしたい。楽しく全力で勝ちにこだわってやりたい」(水上)
 
 8月16日、帯広農は第2試合で健大高崎(群馬)と対戦する。高校で野球を終える彼らにしか感じられないことが必ずあるはずだ。だからこそ、本当に納得するかたちで終止符を打ってほしいと思う。

 一度は引退を決めた彼らが最後までやりきったとき――何十年経っても堂々と話せるストーリーが完成するはずだ。

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