2020.07.21

9球団のスカウトが静岡に集結。
「中村奨成より強肩の捕手」とは何者だ

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

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「肩は中村奨成(広陵→広島)より上」

 そんなスカウト評を新聞で目にして、7月12日、慎重に”3密”を避けつつ東京から静岡に向かった。

 3年前の夏の甲子園、中村の超高校級のスローイングを見たときは脳天に電撃が走った。球足の遅いバントの打球に捕手の中村が素早くチャージして、そのまま助走をつけて二塁へ。低い軌道のボールはうなりをあげて二塁に伸びていった。ただ肩がいいだけでなく、身体能力の高さをうかがわせる身のこなしも目を引いた。

 その後、甲子園で1大会6本塁打の新記録を樹立した中村は、2球団からドラフト1位指名を受け、広島に入団している。

プロ注目の強肩捕手、磐田東の二俣翔一 本当に、中村以上の肩の持ち主などそう簡単に見つかるものなのか……半信半疑にならざるを得なかったが、浜松球場に到着してシートノックが始まり、ボール回しの1球目を見て考えが変わった。その捕手、二俣翔一(磐田東)が投じたボールは、1球で相手チームの盗塁意欲を削ぐような威力があったからだ。

「キャッチボールから、ふんわり投げるより、ライナーでのボールを意識しています。相手に強く、低い軌道で投げています」

 肩に自信がある選手は、えてして自分の肩を誇示するために試合前から遠投をすることが多い。ところが、試合前の二俣を観察していると、キャッチボールは40〜50メートルほどしか下がらない。その理由を聞くと、二俣は「実際に試合でキャッチャーが投げる距離の感覚を大事にしています」と答えた。

 遠投をすれば120メートルもの距離を投げられるそうだが、あえて実戦感覚を大事にする。この選手がただ強肩に頼っただけの捕手ではないことが伝わってきた。

 二塁送球タイムの自己ベストは1秒79。二俣が本気で投げれば、高校時代の中村並みの猛烈な送球になるのは間違いないだろう。この日、バックネット裏に集まったスカウトは9球団。チーフスカウトクラスを連れてクロスチェックする球団も複数あり、二俣の力量を見定めるため本腰を入れていることが伝わってきた。