2020.07.21

最速156キロのドラフト候補が、
変化球ピッチャーを目指す理由

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

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 ジャイアンツ球場の電光掲示板にはっきりと、「156」という数字が表示された。

 アマチュアの投手がこの球速を投げたとなれば、ちょっとしたニュースになるはずだ。しかもその日、ジャイアンツ球場で行なわれた巨人二軍とNTT東日本のオープン戦(無観客試合)に、アマチュアを重点的に取材している人間は私以外にいないようだった。

 156キロを計測した投手の名前は小又圭甫(こまた・けいすけ)という。千葉英和高時代からドラフト候補として知られ、國學院大を経てNTT東日本に入社して3年目の25歳である。

巨人二軍とのオープン戦で156キロをマークしたNTT東日本の小又圭甫 ただし、ケチをつけようと思えばつけられた。156キロを計測したのは、巨人の打者・山瀬慎之助が放った強烈な投手ゴロへの1球だった。「156」という数字は小又のボールではなく、山瀬の打球スピードだった可能性もある。

 その一方で、小又は直後に155キロをマークするなど、150キロ台の数字を連発した。それだけに、156キロが出てもなんら不思議ではなかった。

 この数字をどうとらえ、どう伝えるべきか。悩みつつ試合後にNTT東日本の飯塚智広監督を訪ねると、飯塚監督はこともなげにこう言った。

「ああ、156出てましたか。これで最近3回目くらいですね」

 昨年まで最速154キロだった小又は今年に入り、156キロを複数回マークしているというのだ。

 飯塚監督は続けた。

「去年まではケガが多かったので、練習がしっかりできていなかったんです。投げ込みする姿なんてほとんど見たことなかったですから。今年は痛みがなく、しっかりと練習できているから、その自信がボールに表れています」

 小又の野球人生はケガの歴史と言い換えてもいいくらい、故障が多かった。とくに大学時代は、本人も「最初の3年はほとんどボールを握っていません」と言うほどだった。

 大学1年時、右手の指先にしびれが起きた。検査してみると、肩につながる第一肋骨が折れて肩を圧迫し、血行障害を起こしているという。すぐに手術して骨を取り除いたが、2年時にはヒジを痛めてトミー・ジョン手術を受けた。