ドラフト上位候補がズラリ。
選りすぐりの地方大学12人の逸材たち

  • 高木遊●文 text by Takagi Yu
  • photo by Takagi Yu

 打球はぐんぐんと伸びセンターの頭上を超え、俊足で神宮球場のダイヤモンドを駆け回り三塁まであっという間に到達した。それが2016年の全日本大学野球選手権大会(以下、大学選手権)、「吉川尚輝のための」と言っても過言ではない大会の幕開けだった。

 当時4年生だった吉川(現・巨人)は、この年全国大会初出場だった中京学院大(岐阜学生リーグ)の3番打者。神宮球場での開幕戦(日本文理大戦)の1回裏、吉川は冒頭の三塁打を放って先制に成功。遊撃守備でも面白いように吉川のところに打球が飛び好守を連発した。

 この開幕戦の勝利で勢いに乗った中京学院大は、桐蔭横浜大、亜細亜大といった過去に日本一経験のある大学を立て続けに破った。さらに準決勝で奈良学園大、決勝では中央学院大を破って初出場初優勝の快挙を達成した。

 吉川も打率.364で侍ジャパン大学代表に選出され、日米大学野球では二塁手として京田陽太(日本大→中日)と二遊間を組んだ。

「地方大学の好選手」から「大学球界を代表する選手」へと飛躍を遂げ、秋には巨人からドラフト1位指名を受け、まさに"シンデレラストーリー"だった。

 だが、今年はこの吉川のようなシンデレラボーイは生まれない。新型コロナウイルス感染拡大の影響で大学選手権の中止が決まり、侍ジャパン大学代表の活動も止まっている。

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