2020.05.26

志村けんさんが亡くなって甲子園
中止を覚悟した球児の本心と底力

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

「夏の甲子園中止」については、それなりに覚悟はしていたが、いざ正式に決まると、やはりやりきれない思いがこみ上げてくる。

 夏の甲子園の熱狂と興奮は何事にも代えがたく、あの空間で過ごすひと時はじつに贅沢である。なにより楽しみなのは、選手たちのパフォーマンスだ。厳しい練習に耐え、鍛え上げた力を遺憾なく発揮する者。そして夏の大会では必ずといっていいほど「甲子園のスター」が現れる。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、戦後初の夏の甲子園中止が決定した 昨年なら決勝で星稜の奥川恭伸(現・ヤクルト)からホームランを放った履正社の井上広大(現・阪神)がそうだし、一昨年なら決勝まで勝ち上がった金足農の吉田輝星(現・日本ハム)が甲子園を沸かせた。

 また、2017年夏の甲子園では広陵の中村奨成(現・広島)が大会6本塁打を放ち、2016年夏に古豪復活を果たした作新学院のエース・今井達也(現・西武)もそのひとりだろう。

 彼らは甲子園での活躍によってスカウトたちの評価を一気に上げ、その秋のドラフトで上位指名を受けた選手たちだ。だが今年は、そんな「甲子園のスター」に出会うことができない。

 それどころか、誰もが目指す甲子園の道さえ閉ざされてしまったのだ。培ってきた技術を発揮できず、高校野球にピリオドを打たなければならない選手たちの落胆は、我々の想像をはるかに超えるだろう。彼らにかける言葉が見つからないというのが、正直な感想だ。