2020.05.19

腹切り発言の開星・野々村監督が復帰。
切実だった事情と新指導への思い

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Inoue Kota

「『現場が恋しくなったんだね』とか、『もう一度甲子園に行きたくなって、前監督を引きずり下ろしたらしい』とも言われとるようだけど、そんなことはまったくない。(監督復帰は)とんでもない、ありえないことだと思ってましたから」

 今年3月から開星(島根)の監督に復帰した野々村直通(なおみち)は苦笑気味にそう語る。

8年ぶりに開星の監督に復帰した野々村直通氏 府中東(広島)の監督として春1度、創部当初から率いた開星では、前身の松江第一時代を含めて、春夏計9度甲子園出場。一般的な教師像とは一線を画した迫力ある風貌、高校野球の監督ではめずらしい美術教師というプロフィールから、「やくざ監督」「山陰のピカソ」の愛称でも親しまれた個性派監督だ。

 糸原健斗(阪神)、2年生だった白根尚貴(元DeNAほか)を擁して出場した2010年春のセンバツの初戦で、21世紀枠出場校の向陽(和歌山)に敗戦。試合後の囲み取材の終了間際に発した「末代までの恥、腹を切りたい」の発言が問題視され、一度は辞任したものの、監督復帰を望む署名が県内外から集まり、2011年春に再び監督に就任した。

 その年の夏の甲子園に出場し、初戦突破後の2回戦で、西東京代表の日大三と激突。吉永健太朗(元JR東日本)、高山俊(阪神)、横尾俊建(日本ハム)らが主軸を張る超高校級チームを相手に、一歩も引かぬ乱打戦を繰り広げた。試合は8−11で惜敗したものの、万感の思いで甲子園を去った。