2020.05.17

「岡本和真に負けた」。そして元U 18
日本代表の野球エリートは起業を目指した

  • 沢井史●文 text by Sawai Fumi
  • photo by Sawai Fumi

「ずっと経営者になるのが夢だったんです」

 ビシッとスーツを着こなし、そう照れくさそうに話す青年の名は安田孝之。明徳義塾では3年生の時に春夏連続甲子園に出場し、U18日本代表にも選ばれるなど、いわば野球エリートだった人物だ。そんな安田が、経営者になりたいと思うようになったのは、野球に熱中していた高校時代だった。

「自分は母子家庭で、必死に働いている母の背中を見て育ったんです。仕事の合間に自分の試合を見に高知まで来てくれたり......そんな母を働いて楽にしてあげたいというのもありました」

昨年7月にオーダースーツの事業を立ち上げた安田孝之氏 安田が中学時代に所属した東大阪シニアは、2002年夏に明徳義塾が全国制覇を成し遂げた時の主将・森岡良介(現ヤクルト内野守備・走塁コーチ)をはじめ、多くの甲子園球児を輩出した関西でも有数の名門チームだ。

 投手と三塁手を兼任し、チームの中心選手だった安田は、明徳義塾入学時"森岡二世"と騒がれる逸材だった。入学してすぐにAチーム(レギュラーチーム)に帯同し、春の大会ではベンチ入りを果たしたが、その安田と同じぐらい期待されている同級生がいた。今年、徳島インディゴソックスから埼玉西武ライオンズに入団した岸潤一郎だ。

「岸は中学の時から有名な選手でした。入学してすぐ僕と岸がベンチに入って、練習試合で僕が先発して、岸がリリーフして勝った試合がありました。その頃はコントロールに自信があって、変化球もまあまあ。逆に岸はスピードで押すタイプで、どちらかというと試合をつくれるのは自分のほうでした。それに初打席で右中間に二塁打を打つなど派手な高校デビューを飾り、自分は(岸に)負けてないと思っていました」