BC屈指の強打者がドラフト指名に強気「NPBの1軍でも打てます」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 そして速水はこう吐き捨てた。

「ただ棒を持って、振っているだけ......みたいな感じでしたね」

 高校卒業後は野球をやめ、就職することも考えた。だが、コーチの勧めでBCリーグのトライアウトを受験。群馬県高崎市出身の速水は、地元球団の群馬ダイヤモンドペガサスに入団する。

 そこで速水は人生を変える出会いを果たす。フランシスコ・カラバイヨと井野口祐介というチームの大先輩だった。

 カラバイヨはオリックスに在籍したこともある、日本独立リーグの歴史に残るホームランバッターだ。四国アイランドリーグ、BCリーグに所属した7年はすべて本塁打王を獲得。昨季限りで現役を退いたものの、速水はこのベネズエラ人スラッガーから「体の使い方を教わった」と語る。

「カラバイヨには『両手、両足をしっかりと使えば飛んでいくから』と言われました。1年目のオフは、カラバイヨのアメリカの自宅で1カ月ちょっと練習させてもらいました。2年目はカラバイヨみたいな構えで打っていましたしね」

 井野口は「ミスターBCリーグ」と評すべき、リーグの大ベテランである。34歳になった今も20代前半の選手に混じって現役生活を続け、昨季はキャリアハイの23本塁打(70試合出場)を放った。右打者ながら右中間方向にも本塁打を飛ばす打撃技術とウエイトトレーニングに励む姿に、速水は大きな影響を受けた。

「群馬はホームランを打ちたい人が多いので、すごく刺激がありましたね」

 独立リーグ1年目は0本塁打と結果は出なかったが、2年目は8本塁打。3年目の昨季は打率.34115本塁打と結果を残し、BCリーグ選抜にも選ばれた。だが、昨秋のドラフト会議で指名されることはなかった。当時の速水には、重大な欠点があったのだ。

 昨年のBCリーグ選抜とヤクルト二軍の交流戦、バックネット裏に集まったスカウトのなかには、シートノックの時点で速水をリストから外した球団があってもおかしくなかった。ファーストに入った速水の送球動作は見るからにぎこちなく、不格好だった。ヒジか肩を痛めているのかと思うほど、スムーズに動かない。当時を速水は「急にいろいろと直そうとして、かえっておかしくなってしまった」と振り返る。

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